黒兎

□日向
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空は晴天。

風は穏やかで日差しも暖かい。


対して伊坐薙は


「………」


これ以上無いほど不機嫌な顔をしていた


「なに湿気たツラしてんでぃ。さっさといくぞ」

「……」


先ほどあった少年と共に。



「なんでだよ!!!」


なんで目覚まして外出歩いて今餓鬼に連れられてんの!?俺!


「なんでって…勝負は勝負だろぃ、約束は約束ちゃんと守れよ」

「約束なんてした覚えねーよ!
しかもなんだこれ!」


伊坐薙を見ると、首には首輪のように縄が縛ってあり、その縄はそのまま腕へと続き手錠のように動きを制限している。

その綱を引くのは勿論目の前を歩く少年、沖田総悟だ。


「見てわかんねーの?逃げねぇように縛ってんだよ」

「だから逃げねぇって」

「てめぇは信用ねーからな」

「はぁ?」


淡々と歩きながら、総悟は歩を進める


「勝負ついて行きなり逃げようとしたじゃねーか」

「は、はい?なんのことかな?」

「惚けんじゃねーよ。この嘘つきが」

「嘘ついてねーし負けたら着いていくなんて約束もしてない」

「頑なだなぁおい」

「そりゃどーも」

伊坐薙はツーンとそっぽを向いた。


ふと、ため息をついて、無感情に空を見上げる。

それもこれも、あの勝負からはじまった。


 







剣先を伊坐薙へと向け、沖田は彼を睨み付ける。

対し伊坐薙はにやりと笑っていた


「こいよ。力付くでも連れてくんだろ?」

「じゃ、お言葉に甘えて俺から行かせてもらおうかねぃ」


その言葉と共に、沖田は駆け出し伊坐薙へと剣を振り落とした。


その動きを見切り、つまらなそうに最小限の動きでかわす

沖田は振り落とした剣をさらに振り、連続の攻撃を伊坐薙へと繰り出すが、彼に掠りもせず剣は空を切る


―――ま、こんなもんか…


完全に剣をかわしきった伊坐薙は隙をついて剣を持つ手に一撃を軽く加え、剣を宙へと弾き飛ばす


そして






    ぞくり






「!!」


一瞬、沖田の背筋に嫌なものが流れる

そうさせているのは目の前の黒い少年


彼は鋭く沖田を見据え、その目にはなんの感情もこもってないように見える。


少年は剣を弾き飛ばした後、一瞬でゼロ距離へと近づき、その手刀は的確にその喉元へと伸ばされ――――



無意識の世界だった。

その直後、一瞬だけ動きの鈍った伊坐薙の手刀を払い除け、伊坐薙の襟元をつかみ投げ飛ばす。


伊坐薙は八百屋の商品棚へと飛ばされ、沖田は落ちてきた剣を宙で掴み、伊坐薙の喉元へと剣先をつけた。



伊坐薙は何が起こったのかわからないと言うように目を丸くし沖田を見ていた


そして沖田はそれを、にやりと見下ろした。



「勝負ありだ」




  
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