黒兎

□撤退
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どれくらいの時間がたったのだろう。

銀時と高杉の二人と伊坐薙、攻防は一進一退。

決着がつかない中、ただ時間だけが浪費していった。


「あの侍…。伊坐薙の動きに食らいついてきてやがる。」


三人の戦いを見ていた天人が呟く。


ちょうどその時、伊坐薙は二人を傘で薙ぎ倒し、船の外へと押し出した。それを追い、彼もまた外へ出る。


「…。侍ってのはこういう奴ばっかなのか?」


下に落ちた二人を不快な目で見下ろす。



二人は立ち上がろうと刀を杖に起き上がった。


「あとどれくらいだ?」


銀時が隣の高杉に問う。
今回の目的は捕まった仲間の解放と敵の戦力を少しでも削ること。

銀時が伊坐薙を足止めしたのは彼が動けば仲間の解放というところに支障がでるためだ。殺されてはもとも子もない。


「とてもじゃねぇが、手負いの今じゃあんまり長くは持ちそうにない。」


「そんなこたぁ、わかってるよ。時間になったら合図がでる。」


二人は刀を強く握りしめ、再び走り出す。伊坐薙もほぼ同時に動く。

三人が接触する直前、伊坐薙は飛び上がり二人の後ろに着地する。

瞬時に振り返り傘で足を崩しに掛かる。

二人はすれすれで後ろに下がり傘をかわす。

かわされたと同時に伊坐薙は高杉との距離を縮め、蹴り飛ばす。

直後、銀時が目の前に現れ、刀で伊坐薙の左肩に刀を突き刺す。
「ぐ…!」
その状態のまま船体まで伊坐薙を押し付けられた。


「…。」


無言のまま銀時に目をやる。


「…その目だ。」


ゆっくりと口を開く。


「その目を見ているとイライラする。思い出すだけで不愉快だ。」


肩に刺さった刃を握り、力を入れる。手は刀の刃により血がしたたり、対して刃は少しずつ動き肩から抜ける。



その時だった。

敵の砲撃が二人の頭上部分の船体に命中する。

その大きな破片が二人にふり注ぐ。

「「!」」

伊坐薙は咄嗟に銀時を蹴り飛ばし、銀時は高杉の目の前に転げる。

同時に伊坐薙の頭上に鉄の塊が下に落ちる。


「な…!」


銀時は伊坐薙の思わぬ行動に目を見開き、さっきまで居た場所を見る。

そこは土煙りが立ち、誰かの影が映る様子はない。


「時間だ。」


高杉は銀時に告げる。船内からは多くの侍が引き上げを始めていた。


「俺まで殺す気か!」

「狙ったのは俺じゃねぇよ。俺達も早く引き上げるぞ。チャンスは一度きり、弾を無駄使い出来る余裕はないんだ。」

「わかってるよ。」


銀時と高杉はその場を引き上げた。



 
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