黒兎
□奇襲
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「てめぇ…。」
銀時は刀を握り直し伊坐薙を睨む。
「だから手を出すなって言ったのに。」
伊坐薙は嘲笑うように彼に吐き捨てる。そして銀時に目を移す。
「アンタも犬死にしたくなけりゃあ、こんな無駄な戦争辞めてさっさと逃げればいいものを。」
「犬死にじゃねぇよ…。死んで逝った奴らに犬死にしたもんは一人もいねぇ!」
「逆だよ。全員犬死にしてんだ。
戦争始めて何が変わった?何も変わってないだろう。
結果の見えるこの戦争でいくら足掻いたって何も変わらなければ意味はない。」
「そうやって全てを諦めちまうより、足掻いて、もがいて、てめぇの信じる道を守って行かなきゃならねぇ時があるんだよ。」
「わかんねぇな…。
何故そうまでして足掻こうとする?何の意味がある?」
「意味なんざねぇ。
ただ俺は最期まで自分の信じた道を行くだけだ!」
銀時は伊坐薙に切り掛かる。傘でそれを受け止め、銀時の目を睨む。
死ぬことなんて全く考えていない、諦めるつもりもない。
目に宿るそれは憎悪でも何でもない。
今までに感じた事のない目だ。
伊坐薙は銀時を薙ぎ払い、いくつもの攻撃を加える。
その度に銀時の身体は傷付き、倒れ込む。
しかし何度攻撃を重ね倒しても、立ち上がりその目で睨みつけてくる。
伊坐薙は銀時との距離を詰め、切りかかってきた所でそれをかわし、腕に手を突き刺す。
そして足を崩し、頭を手で鷲掴みにして顔面を地面にたたき付けた。
「かっ…は!」
頭は地面にめり込み、銀時の動きがとまる。
「くだらない。何が自分の信じる道だ。」
伊坐薙は頭から手を離し、動かないのを確認してから後ろに返る。
そして動力炉に向かおうと足を進めた。
瞬間。
後ろから頭めがけて刀が突き刺す。
伊坐薙は一瞬の殺気を感じ、頭を逸らしたことでそれをかわした。
空を切った刃は頬をかすめ、一本の赤い線を描く。
そこから血が流れ落ちた。
後ろに立つのは銀時だった。息は荒れ、立っているのがやっとのように見える。
「まだ…終ってねぇよ。」
「本当に一々面倒臭い奴らだ。」