黒兎
□奇襲
3ページ/4ページ
攻め寄った伊坐薙はその勢いのまま直ぐ右側の壁に銀時をたたき付ける。
捕虜反乱により脆くなった壁は大きな音を出し崩れ、もろに喰らった銀時の口からは血が吐き出された。
そのまま隣の部屋らしき所に吹っ飛ばされる。
そこは部屋と言うには大きすぎ体育館ほど広くはないがそれなりに広いスペースだった。
周りには銀時だけではなく戦闘中の他の侍、天人の姿が入り乱れている。
突然銀時が吹っ飛んできた事に彼等は驚き、銀時から距離をとる。
銀時は体勢を立て直し、口に残った血を唾とともに吐き出す。
突き破られた壁から伊坐薙がゆっくりと中に入ってきた。
「悪いが今回は遊ぶ暇はねぇんだ。
…おいてめぇら。手を出すんじゃねぇぞ?命が惜しけりゃなっ!」
言い終わると同時に再び銀時に傘が襲う。
銀時は振り落とされた傘をかわし、瞬時に切り掛かる。
伊坐薙はそれを避け、銀時の後ろに素早く周りこんだ。
銀時の背中を蹴り飛ばし、直後吹っ飛ぶ銀時との距離を縮め、腹に拳を全力でぶつける。
銀時は吹っ飛び壁に突き当たった後、壁からはがれ落ち座り込んだ。
あまりの一方的な戦闘に助太刀に入ろうと一人の侍が伊坐薙に後ろから切り掛かる。
「オォォォォ!」
グシュ
一瞬の出来事だった。後ろから切りかかったはずが逆に後ろに回り込まれ、心臓を一突きに貫く。
銀時の目に仲間の胸から手が突き出ている姿が写り込む。
心臓を貫かれた彼の顔は激しく歪み、声すら出すことも出来ない。
彼の胸から手をゆっくりと引き抜かれる。
膝を付き倒れ込み、後ろには手に付いた血を舐める伊坐薙の姿があった。