黒兎
□出発
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回想。出発前。
「本当にいいんだな?」
船に乗り込む直前、伊坐薙は神威に向かってもう一度聞いた。
「? いいかって何が。」
惚けたように返す神威に半分面倒臭そうにしながらも伊坐薙は神威の正面に向き直し、はっきりと言った。
「だ・か・ら。
お前は今回の仕事に本当に行かないのかって聞いてんだよ。」
「あぁ。そのこと。
前にも言ったろ?興味ないって。」
「お前…。内容ちゃんと把握して言ってんのか?お前なら喜んで行こうとするだろ?
いつもなら。」
即答で答える神威に伊坐薙は念を押す。
そんな様子を見て神威は半ば呆れたように返事をする。
「しつこいなぁ。そんなに来てほしいの?全く伊坐薙はがそんな寂しがり屋だなんて思わなかったよ。」
「なっ!そんなんじゃねぇよ、気持ち悪い。」
「とにかく。
俺は行かないから気にしないで楽しんできなよ。」
「…。」
納得いかない様子の伊坐薙は神威の目を不機嫌そうに睨む。
そして軽く溜息をついた。
「もういいよ。後で後悔しても知らねぇからな。」
そう言い残して伊坐薙は船内へと向かう。
神威はいってらっしゃいと笑顔で手を振る。
そして伊坐薙の乗り込んだ船は地球へ向けて出発した。
これが出発前の一部始終である。
回想おわり。