黒兎
□暇潰し
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伊坐薙は一歩踏み出し、相手との距離を一気に縮める。そこから間を置かず低い体勢で相手の懐に入り込んだ。つい口元が緩む。
「なっ!」
猫又は半歩足を後ろへ下げ、距離を取ろうと瞬時に動く。
しかしそれよりわずかに速く、伊坐薙は前に踏み出した足に力をいれ、最小限の動きで後ろに回り込む。
そして猫又が半歩下がったところで、右腕を猫又の横腹にねじ込んだ。
「がっ!」
猫又はその衝撃に耐え切れず、横に五メートル吹っ飛ばされた。
「んー…惜しい。もう少しで六メートルなのに。
やっぱ神威はセコいよな。
パワーのハンデ分このゲームは不平等だ。」
対して伊坐薙は余裕の表情だ。伊坐薙は猫又の方を向き直す。
「立ちなよ。ゲームはまだ終わってないよ。
今度はそっちから仕掛けさせてあげるからさ。」
猫又は立ち上がり、伊坐薙を睨み付ける。
「クソッ。なめやがって…。うおーーーーー!!」
伊坐薙目掛けて猫又が走り出す。
伊坐薙は構えを取ろうろもしない。
「アンタ。俺を混血だからって嘗めてたろ。」
猫又の攻撃の嵐を軽々とかわす。
「あんま嘗めてっと…」
猫又の拳を両手で受け止める。次に来る蹴りを、猫又の肩を土台にし、ひょいと逆立ちしてかわす。
そしてその肩を掴んだまま猫又の後ろへと着地し、
「うォォォらァァァ!!」
「うゎァァァァァ!!!」
猫又を正面の壁に思い切り投げ捨てた。
「殺すよ…?」
伊坐薙の目は、冷たく相手を見据えていた。