黒兎

□依頼
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「で、次の仕事は何だったの?」


神威は伊坐薙に問う。


「ん?あぁ…、今度は地球だと。」

「地球?じゃああの無駄な戦争、やっと終わらせるんだ。」

「まあな。」


伊坐薙は気怠そうに廊下を歩く。


「地球と言えば、伊坐薙の故郷なんじゃないの?」


ふと、唐突に思い出したかの様に神威は伊坐薙の前に出た。それにも構わず、無視するように足を進める。


「自分の故郷を敵として侵略に行くだなんて。どうなの?気は進まないんじゃない?」


神威はケラケラと笑う。その姿はどこか楽しげだ。


「どうでもいいよ、そんなこと。記憶すら無いものにまで感情を挟めるかよ。」

「まぁそう言わずに。君の半分の血は人間なんだろ?」

「はっ」


伊坐薙は吐き捨てるように鼻で笑う。が、表情はすぐに消え去った


「あんな弱い奴等と一緒にすんな。
同じ血が混じっているだなんて考えたくもないよ。ムシずが走る。」

「ははっ。すごい言われよう。」


「とにかく。そんなこと、俺には関係ない。…で、お前はどうするんだ?」

「どうするって?」


伊坐薙からのいきなりの神威はきょとんと聞き返す。


「だから、行くのか行かないのか。」

「うーん…そうだな…。」


神威は少し考えるそぶりを見せて、すぐに返事を返す。


「今回はいいや。つまらなそうだし。」

「ふーん、そっか。まぁ人数もあんまり必要ないだろ。何人か連れて明日にでも出発するか。」


そう言い浅い欠伸をすると、ふと何かを思い出したかのように口を開いた。


「そういや…阿状兎。あいつどこ行ったんだ?」

「阿状兎?さぁ?」


「どこ?じゃねぇよ。このすっとこどっこい。」


いつの間にか後ろに居た第三者目に、驚きもせず無言に振り返る。



「あぁ。居たの。喋らないから居ないかと思った。」

「ずっと居たよ!初めから!っていうか分かるでしょ。一緒にいること。同じ行動してんだから。」

「そんなんわかんないよ?だってこれ文章だもの。漫画やアニメと違うんだよ?ちゃんと自己主張してもらわないと。
で。ひとりでこそこそ何やってたんですか、おじさん?」

「いやいや、人がなにか陰気な事してるみたいな言い方やめてくんない?
ただ考え事してただけだからね?おじさんだって考えることだってあるの!」

「考え事?」

「どこかの誰かの団長さんが、明日急に出発だって突然言い出したから、その段取り考えてたんだよ。
なにも準備無しに行きなり出発できると思ったら大間違いだぞ、すっとこどっこい。」

「…。」

「大体、指示出すのは団長の仕事だろ。これだからこの怠け者は…「はいはい、わかりましたよ。
少しは自分で考えますぅ。」


〈〈ぜったいわかってない。〉〉


「ちぇっ。これだから団長は…」


一斉に二人がつっこむ中、伊坐薙はぶつぶつとひとりで悪態付く。





こうして、伊坐薙は阿状兎、その他数名を連れて、地球へと向かうこととなった。





 
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