黒兎

□依頼
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とある遠く離れた星。



空には黒く分厚い雲が広がり

大地には生臭い血の臭いと

この星の生物であったの天人の屍によって埋め尽くされていた。




ただ一人。屍の中でたたずむ少年がいた。




茶色を帯びた黒い髪に、白い肌。
手には血に汚れた傘を持っている。


そして、敵の返り血を浴びた小さな体は赤く染まり、ここが激しい戦場だったことを物語っている。



静かになった戦場で、少年は己のした行為の痕を
ただ、ぼんやりと眺めていた。



その目には、喜びも悲しみも、何の感情も持っていないようである。




「団長。」

そこにまた一人。黒髪の少年と同じ、それよりも少し若い程の少年が現れた。


髪はオレンジ色、後ろで三つ編みにされている。
肌は同じく白いが、その白さは透き通るようだ。


「その呼び方はやめないか?俺は団長なんて柄じゃないよ。」

「じゃあ伊坐薙。用は済んだんだし、さっさと出ようよ、こんな星。もう飽きちゃった。」


オレンジの髪の少年は不満そうに、伊坐薙と呼ばれた少年に言う。

その姿を見て、伊坐薙は思わず苦笑した。


「散々暴れまわった挙句に飽きたはないだろ。この星の人達に失礼だぞ?神威。」

「何言ってんのさ。」


神威は微笑し空かさず反論する。


「そりゃアンタだろ。
降伏する相手を女子供関係なく完膚なきまでに叩きのめして。俺達は止めたってのに。
非道だなぁ。」

「お前にだけは言われたくないよ。」

「おかげで俺は消化不良。
面白い奴もあんまり居なかったし…おいしい所は全部伊坐薙が持ってっちゃうし…
つまんないや。」


神威は伊坐薙へ目線を向け、挑発するような笑みを浮かべる。

伊坐薙は少しため息をついた。


「わかったよ…。確かに仕事は終わったし、これ以上の長居は無用だ。」






「戻るか。」





そして二人の影は、深い闇の中へと消えていった。




これは宇宙海賊春雨 第七師団団長である伊坐薙と侍との出会いの物語――――――





 
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