黒兎
□接触
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銀時と桂達が戦場に着いた時には、もう既に辺りは静まり返っていた。
足元には死体が敵も味方も関係なく多く敷き詰められている。
「何だ…これは…。」
思わず桂が呟く。
「俺達が着く少し前に出陣したんじゃなかったのか?」
「確かにおかしいな…。戦闘が終わるには早過ぎる。」
銀時達は手分けして生存者を探す。
しかし、ほとんどが一撃で急所を突かれていて生きている者がいるとは考えられなかった。
更に奥へと進んで行くと、銀時はあることに気付いた。
「おい、ヅラ。」
「ヅラじゃない桂だ!なんだ。」
「天人を見てみろ、こいつら刀傷で死んだんじゃねぇ。」
横たわる天人は刀傷が深い者もいるが、所々強く殴られた跡や何かに突き刺された跡が残っている者もいる。
その数は決して少なくはない。
「同士討ちか?」
「多分な。」
更に進むと、そこに一つの人影があった。
銀時と桂は腰の刀に手を伸ばす。
その影はこちらに気付く様子はない。
しかし天人にしては小柄で、まるで人間の子供の様にも見える。
「子供…?」
しかしこんな戦場に人の子がいるわけがない。
銀時は警戒しつつゆっくりと近づく。
すると影はその姿を現しはじめた。
血に濡れた黒い髪は、元の茶色もあってか紅く妖しく光るり、黒い中国の民族衣装を身につけている。手には傘を持ち、全身は汚れていないところが無い程に血に塗れている。
明らかに異質である。
その少年は歩き出そうと銀時達とは全く別の方向へ一歩踏み出した。
が、その動作は不自然に停められた。
少年の横に横たわる侍が少年の足を掴んだのである。
ヤバイ…!
悪い予感を感じた銀時は少年の方へ駆け出す。
少年はその侍を冷たく見据え、何かをしゃべったかと思えば傘を持つ右手を振りかざした。
間に合え…!
振りかざされた傘が侍めがけて一気に振り落とされた。