黒兎
□参戦
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伊坐薙の率いる隊は小型船を使わず、母船の直ぐ下に降り立った。
敵はすぐ目前にまで迫り、他の隊は応戦を始めている。
「あれが侍か…。」
侍を冷たく睨む。
そして夜兎の武器である傘を握り締めた。
「行くぞ!」
掛け声と共に伊坐薙の部隊も戦闘へ突入する。
伊坐薙も駆け出し、一気に敵の中枢に侵入し敵を傘で薙ぎ払った。
ガードの薄い首や横腹から敵の急所を狙い、確実に鮮やかに一撃で仕留める。
その時、背後から敵が刀を振りかざしてきた。
瞬時に伊坐薙は後ろ向きのまま自分より大きな敵の懐に入り込む。
同時に振り返り、喉元めがけて手を突き刺す。
グシュ
伊坐薙は突き刺した腕を横へ払いのけ、男の首から手が解放される。
その光景を見た侍達は一瞬動きが止まる。
「な…何故こんな子供がこんなところに…?」
「そんなことより、なんだあの動き…人間なのか?」
そんな彼らを見た伊坐薙は冷たい眼差しを向ける。
そして彼らに身体を向け、足を踏み出す。
「来るぞ!構えろ!」
伊坐薙は一瞬で距離を詰め、次は敵の足を狙い、体勢を崩し倒れ込むと同時に留めを刺す。
「速いっ…グァ!」
次々と敵を仕留め、止まることを知らない。まるでそれは戦闘に長ける、というより、暗殺に特化したもののようだった。
何人もの返り血を浴び、次の攻撃を繰り出そうとした刹那、振り上げようとした傘を刀に停められた。