黒兎

□参戦
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第一陣母船内、阿状兎と合流した伊坐薙は百人の兵を目の前にしていた。


「戦力こんだけで足りんのか?」


浮かんだ疑問を伊坐薙に投げかける。


「十分足りるよ。多いぐらいだ。」


余裕の表情に阿状兎の不安は募るばかりである。
その様子を見た伊坐薙は続ける。


「大体な、このタイミングで奇襲をかけてくる場合考えられるのは二つだ。

一つはさっき終わった戦闘は囮で、この奇襲が本当の目的。
だがさっき聞いたとおりだとすれば、敵襲三百は少な過ぎる。

だからこれは二つ目に当たるんだよ。」

「その二つ目って?」

「タイミングばかりを意識して思いつきで突っ込んでくる。」

「そりゃ無いだろ。向こうだって馬鹿じゃないんだ。」

「こんだけ長く続いてる戦争だ。早くけりをつけようと躍起にもなるさ。

それに、即席の戦力じゃあんまり多いと集団行動が上手く機能しない。
それを考えた上で百人がベストなんだよ。」

「なるほどねぇ。」


説明を終えた伊坐薙は百人の兵の前に出る。


「これからこの奇襲の応戦に向かう。指揮は俺…第七師団団長伊坐薙が行う。」


それだけを大声で言うと、兵達はざわざわと騒ぎだした。


「第七師団?なんでこんなガキが指揮官なんだ?」

「ガキで大丈夫かよ。」

「指揮は戦闘と違って頭を使うんだぞ?夜兎に出来んのか?」

「この人数少なくね?」

「俺達死にに行くようなもんじゃねーか。」

これらの文句・疑問を聞いていた阿状兎は「あ〜あ」と溜息をつく。

この状況をどうするのかと伊坐薙に目をやると、誰から見てもわかるように苛立ちを表にしていた。


「だ…団長?」


見ていられず声をかける。


ドゴォン


声をかけたと同時に伊坐薙は背後にある壁を叩きつけた。
壁は大きく凹み、パラパラと破片が落ちる。

辺りはしんと静まり返った。


「…時間がねぇんだ。文句がある奴は前に出な。

…それとも、ここにいる全員で俺を敵に回すか?」


##NAME 1##は不敵の笑みで兵を見下す。


「言っとくが、ここにいる兵が減った所で何の支障も出ない。
丁度多いと思ってたんだこの人数。
ここいらで俺が直接調整をしても構わないんだぞ?」


本気で口にしているのを察したのか兵はおとなしくなった。

それを見た伊坐薙は壁から手を離し、兵に再び指示を出す。


「陣はこの集団を五つに分け、敵を囲み込むように半円の形で配置する。

時間が惜しい、それぞれ移動は小型船で移動。
到着次第戦闘開始だ。

俺達第七師団は一つの隊に四人ずつ付ける。
以上だ。」


伊坐薙の顔から笑みが零れる。


「この戦闘、俺達に負けはない!
行くぞぉ!!」


おぉーーーー!!



掛け声に合わせて兵達は声を上げ士気が上がった。

そしてそれぞれの行動に移った。





 
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