黒星の小説とか。
□Please love me! ――ただし妹のみ――
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僕の両親はここにはいない。何故なら既に他界したからだ。
僕の両親もまた、大学で会った妹と同じ名前の少女の両親と同じく、お伽話の類が好きで、僕と我が妹の名前に使うほど溺愛していた。
「まぁ、僕は両親の溺愛ぶりよりも妹の事を愛しているがね。
――な、×××」
「ふぇっ!?」
ソファーの上でくつろぎながらテレビを眺めていた妹の耳元で囁くと、驚いたのか我が妹の肩が跳ねた。
「ど、どうしたの兄さん……? 私のこと名前で呼ぶなんて珍しい」
「いや、たまには呼んでみたくなってな。そして愛の確認のために呼んでみたというのもある」
「兄妹としての愛の確認だね」
「いいや、異性としての――」
「私もう寝るね!」
そう言うと、我が妹は自らの部屋へと小走り気味に帰っていった。
……………………。
「……ふっ……照れ屋さんめ」
小さい頃は僕を兎と呼んで走り回っていたというのに。
さすがに高校生にもなると兄のことをあだ名では呼ばんし、追い掛けたりもしないが、逆にそのギャップが可愛らしく思えてくる。
確かこういうのをツンデレとか言うんだったか?
「走る兎に追う我が妹。実に良い光景じゃないか」
あの時は僕もまだ若かった。いや、今も十分若いのだが、妹が小さかった頃は僕もやんちゃだったものだ。
妹が抱き着いてきた時とか、興奮してしまって鼻血を出してしまったほどだ。
「さて……約二時間後に我が妹は恐らく寝るだろうから、今のうちに風呂にでも入っておくか」
そうやって妹のことを考えながら僕は生きていくのだろう。
可愛い可愛い妹の、これまた可愛い寝顔を見るために。