黒星の小説とか。
□Don't love me! ――ただし兄のみ――
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ことほかもなく、学校の授業は終わった。
いや、授業中はいいんだけど、休み時間に兄目当ての先輩や同輩や後輩方の兄についての質問が殺到するから、全然休めないんだけどね……。
「今日も乙カレー、カツカレー……なんつって」
「おっつー、今日もよく頑張った!」
「……うん」
放課後、さらなる情報を求めて私を捜して回る女生徒からなんとか逃げ延びて、帰路についている途中に、茶子ちゃんと一人の友人に出会った。
「顔色が悪い? 体調はたいちょうぶ?」
このさっきから駄洒落をかましてくる少女が、残ったもう一人の友人である、八重九重(やえ ここのえ)ちゃんである。
長くて綺麗すぎる黒髪に、スタイル抜群という羨むべき人なのだが……。
「帰路はあと何キロ? もしも徒歩ならトホホな気分?」
彼女の唯一の欠点は何故か真顔で駄洒落を連発し、しかも語尾が上がるので、全ての言葉が疑問系に聞こえることぐらいだろう。
癖だから治んない? とは彼女の言葉。
「ていうか、茶子ちゃんと九重ちゃんが一緒に帰ってるのって、珍しいよね? どうしたの?」
「いやぁ、帰ろうかなっ、て時に九重たんを見かけたからさ、一緒に帰ってたんだよねー」
「私自身もビックリ? 不思議ちゃんと一緒に帰ると思ってた?」
この二人は滅多に一緒に帰らないからといって、決して仲が悪い訳ではない。むしろいい友人関係を築いていると思う。
しかし、二人の間では会話はあまりない。なんたって運動部と文化部だし。
あと不思議ちゃんゆーな。それはお伽話の中の国の名前だ。それに、九重ちゃんの方が数倍不思議である。
「ささ、歩きながら喋ろうよ! 今日はね、クラスの男子が体育の時間でね……」
茶子ちゃんの切り出しで止まっていた足が動く。
まぁ、こんな恵まれた帰路も、たまにはあってくれないと困るけどね。