黒星の小説とか。

□Don't love me! ――ただし兄のみ――
3ページ/9ページ


私の通う学校はいたって平凡な公立高校で、スポーツが強いわけでもなく、文化部がめざましい賞を穫ったわけでもない、メリットが無ければデメリットも無いような学校だ。

「えぇと、教科書はちゃんと入れたか――」

学生鞄の中を確認したとき、中に一通の手紙が入っていた。

「はて? こんなの入ってたかな?」

中をみると、なにやら見慣れた綺麗な文字。おそらく兄の手紙だろうね……。

紙は五枚にも及び、その紙にはぎっしりと愛の言葉が書き綴られていた。

親族からこんなにも熱烈なラブレターをもらう人は、おそらくこの世で私一人だけだろう。

あまりにも長いので飛ばし飛ばしに読んでいると、愛の言葉ではない、ある一文が目に留まった。

「なになに? この文を読んでいるとき、時間をみてごらん。遅刻するんじゃないか? …………えっ!?」

慌て時計を確認すると、時計の針が八時を回ろうとしているじゃないか!

「ち、遅刻だぁーっ!?」

部屋を飛び出て台所に向かい、まず顔を洗って歯を磨く。そしてリビングに置いてあったパンをくわえて玄関に向かうと、すっかり準備ができた兄が笑顔で立っていた。

「うむ、計算通りのタイムだ。流石は我が妹」

「に、兄さんも意地悪だよ! 遅刻しそうになってるなら教えてくれてもいいじゃん!」

「まぁそう言うな。車に乗せていくから、許してくれ」

う……。やっぱり兄は家から出るとすがすがしいほどに別人だ……。

私にもちゃんと妹としての対応をしてくれるし。

私にとって外出時の兄は理想の兄である。

「さあ行くぞ。早く来い」

「あ、ちょっと待ってよ!」

兄が先に車に乗り込んだので、私も家のすぐ傍に止めてある赤い車に急いで乗り込んだ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ