黒星の小説とか。
□Don't love me! ――ただし兄のみ――
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私の目覚めはいつだってデンジャラス。
「おはよう、僕の可愛い可愛い自慢の妹」
今だって、鍵を念入りに閉めて密室同然にしたはずの私の部屋に、何故か私の兄が入ってきてるんだもの。
ドアを見れば、寝る前にセッティングしたはずの南京錠や鎖やらが綺麗に外されているのが見える。
し、信じられない……。合い鍵は確かに机の中に入れておいたのに……。
「妹を愛する兄の力は偉大なのだよ」
寝言は寝てから言ってほしい。
「寝言のつもりは全く全然ちっともないよ」
じゃあ対象を妹から他の女の子にしてください。
「僕にとって我が妹以外の人間など恋愛の対象外だ」
そうですか。
……今気づいたんだけど、私、さっきから喋ってないんだけど……!
「だから言っただろう? 妹を愛する兄の力は偉大なのだよ」
「ど、読心術……!」
我が兄は、すぐに色々な事を吸収するかのように覚えてくる。なんでも一日あれば大概の事はできるようになるという、まさに天才なのだ。どうせこの読心術もどこかで覚えてきたんだろう。
だから兄は、変態という点を除けば、どこからどう見ても完璧な、まさに彼氏にうってつけの優良物件なのだろう。
事実、兄が通う大学では首席の成績を誇るほどの頭脳を持ち、なまじ顔がイケメンなだけあって、女性からの人気がハンパないとか。
しかしながら、大学内で一番頼りになる人は? のアンケートでダントツの一位をとった男が、
「さて、おはようのちゅーから始まる一週間だ。なに、愛しい妹とのちゅーなら別に口臭が酷くても何ら気にはしないぞ?
あ、そうだ。朝から男女の営みをしてもいいぞ? 僕は妹の為ならいつ何時いかなる時でも臨戦態勢をとることができるからな」
このザマである。
あと、女の子に対してデリカシーのない発言には少しかちんときたが、今はそれよりもすべきことがある。
「……兄さん、着替えるからとりあえず部屋から出ていってくれる?」
「む、別によかろう? 愛し合っている仲ではないか」
「私も愛してるよ。兄妹として」
この兄は、世界に完璧な人間などいないの完璧な見本である。
「はーやーく! 学校に遅れちゃうから!」
メチャクチャ嫌がる兄を部屋からなんとか締め出して、早々と着替えを始める。