黒星の小説とか。

□A HAPPY NEW YEAR! ーーここじゃない何処か違う世界でーー
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ぱんぱんと横から乾いた音が聞こえる。

ちら、と横目でみると、一心不乱に柏手を打ち、なにやら一生懸命に我が妹が拝んでいた。

今俺と我が妹は、初詣でに近くの神社に来ていた。

そこそこ大きい神社なので、やはり人が多いが、我が妹と行くのであれば何処だって俺にとっての天国だ。

「……よしっ!   これでいいかな」

ひとしきり拝み終わったのか、ぱぁっと我が妹の顔に笑顔が浮かんだ。うむ、可愛い。

元旦の初詣ともあって、我が妹は着物を着て、可愛らしく髪を結っていて、まさしく可憐のその一言に尽きる姿だ。

「それにしても……一体何を拝んでいたんだアリス?」

あそこまで一生懸命に拝んでいると、流石に兄として気になってしまう。

もし来年こそ彼氏ができますようにだったとしたら、命を張って阻止しなければならない。

「え?   えー、と……。笑わない?」

「この神社の神に誓おう」

「こ、これから先も、お兄ちゃんといられますように、って……」

「ぐふぁっ!」

「お兄ちゃん⁉」

く……!   流石は我が妹だ、この可愛らしさの破壊力は半端ではないな……!

というか、自分で言っておいて恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にするところが堪らないな!

「お、お兄ちゃんは何を拝んだの?」

「アリスから愛され続けられるように、と拝ませてもらった」

「な……!」

その言葉を聞いた途端、我が妹は、ぼっ、と顔を一気に赤くさせた。

ところで、この神社に縁結び云々のご利益があっただろうか?

「え、えへへ……。流石に面と向かって言われると恥ずかしいものだね」

「その恥ずかしがる姿もまた、可愛らしいぞ?」

「も、もぉ……。またそんなこと言う……」

「本当の事だ」

「ん、ありがと、お兄ちゃん」

そう言って俺の腕に抱きついてくる我が妹。油断していると鼻血が出そうだ。

もし平行世界というものが存在し、もしも我が妹に邪険に扱われるような自分がいたとしたら、俺は速やかに自殺する事を勧めるだろう。

「あ、茶子ちゃんと和子ちゃん、九重ちゃんだ」

我が妹が指を指す方には三人組の着物を着た女の子いた。

確かあれは我が妹のクラスメイトだったな。

「離れた方がいいんじゃないのか?   学友に見られると思うが」

この年になって実の兄とイチャイチャしている姿を見られでもしたら、あまり印象が良くないだろう。誠に遺憾な話しだが。

「んー?   いいの、いいの。むしろあの三人にね、見せつけたいぐらいなんだから!」

そう言って笑顔で俺をぐいぐい引っ張る我が妹が、何よりも美しく、眩しく見えて、思わず頬が緩む。

「……ははっ」

こんな時くらい、こんなにもかけがえの無い大事な妹を授けてくれた神様とやらに感謝したいと思った。


END
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