楽園〜ユートピア〜
□楽園を求めて
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ガチャッ。
「ただいま」
ツアルは玄関のドアを開けて家の中に入った。
「あっ、お帰り兄さん」
そう言ってツアルを出迎えたのは、スイル・リシュー。ツアルの弟だ。
重い心臓病を患っている。
「スイル。動き回るなんて危ないだろう。寝て安静にしてないと」
ツアルはスイルの頭を撫でながら言う。
「大丈夫だよ。今日は調子がいいんだ」
そう言ってスイルは笑う。
「…そっか。でも、無理はするなよ」
大丈夫であるはずがない。手術をしなければならない程、病気が悪化しているのだから…。ツアルはそう思いつつ、学校鞄を下ろす。
「うん。わかってる、無理はしない。…ツアル兄さん、今日も探索に行くの」
スイルが心配そうに言った。
「いや。明日、計画を立ててからだ。」
ツアルは答える。
「そっか。何処に行く予定なの」
「……サラヒミダ遺跡。本当は他言禁止なんだ。会長達には秘密だぞ」
悪戯っ子の様にツアルが笑う。
「うん。リリカさん達には言わないよ」
スイルも笑って答える。
「今日は、検査の日だったよな父さん達は」
ツアルはそう言いいながら制服を着替える。
二人の両親は警察官だ。
「急な仕事が入ったんだって」
「そっか。いつもの事ながら、忙しいそうだなぁ」
「そうだね」
ツアルは着替え終わると、
「行くか」
と言い、スイルを連れ、家を出た。