『怪物』と罵られたこどもの国

□新人『怪物』
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『……生命…が、開……ました』

『異…は?』

『今の…ろ、……ません』

遠い意識の中で様々な雑音と共に数人の男達の会話が途切れ途切れ聞こえてきた。

『よし!……れで、動物…外で…、合成…可…証明……たな』

段々と意識がはっきりしてきた。

『しかし、…近では、子供と……の合成実験……反対の者達が増え……ました』

『ふんっ。あの…達は、こ……験の素晴らしさを……っていない!』

「っ!」

一人の男がドンッとデスクを叩いた。
その音に、私の頭は完全に冴える。

「おぉ!目が覚めたのだな!」

「………」

私の覚醒に喜んでいる男を私はボーッと見つめる。
それは金髪の笑顔がよく似合う男だった。

「服を着なければ風邪を引くな。ディラ、この子の服を持ってきてくれ」

男は近くにいた黒髪の女に声をかける。
そこで私は、自分が服を着ていない全裸の状態であることに気付いた。

「はい、博士」

ディラと呼ばれた女は部屋から出て行くとすぐに服を持って帰ってきた。
それは、何の柄も描かれていない真っ白な膝下まで長さのあるシャツだった。

「これを着なさい」

ディラは冷たく言い放つ。
私は
、一瞬にしてこのディラという女性に苦手意識を抱いた。
しかし、私は言われた通りシャツに手を通した。
着替えが終わると、先程の『博士』と呼ばれた金髪の男が瞳を輝かせて言った。

「起きて早々で悪いが君の『能力』を見せてくれるかい!?」

「………?」

興奮する男に私は首を傾げて見せた。
『能力』等と言っている言葉の意味が理解出来なかったのだ。

―――『能力』とは何だ?

男は、私の反応に困ったように眉をひそめると近くにあった苗が植わっている植木鉢を手に取り、私に差し出した。

「じゃあ、この植木鉢に…そうだなぁ、『早く花が咲きますように』と念を送ってごらん?」

「?」

私は意味がわからぬまま、植木鉢を受け取り、言われた通りに念じた。
すると、どうしたことだろう。
今まで苗だった筈の物が、有り得ない速度で成長し始めたのである。
私は目をみはった。
最終的に苗が紫色をした一輪のパンジーに姿を変えると、男は満足気に頷いて

「素晴らしい!素晴らしいぞ!」

そして、私の肩に手を置くと

「君の名前は『ヘルバ』だ」

と言った。
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