楽園〜ユートピア〜
□楽園を求めて
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午後4時。黄金色に輝く夕陽の光が放課後の生徒会室に差し込んでいる。
「会長。今回は何処に行く?前回のエリスバーン遺跡はハズレだっただろ」
生徒会副会長のツアル・リシューが言う。少し長めの黒髪に深い緑色の瞳の常に冷静沈着な少年だ。
「ちょっと、ツアル物事には『順序』ってものがあるでしょう」
そう言って立ち上がったのは、生徒会副会長のセレナ・ハーリス。
ポニーテールにしている蒼い髪に柘榴のような赤紫色の瞳で、赤い縁の眼鏡をかけたしっかり者の少女。
その隣に座っているのは、生徒会会長のリリカ・フォルテ。
肩の辺りまで伸ばした灰色の髪にエメラルドグリーンの瞳の責任感が強く、遺跡をこよなく愛すクールな美少女だ。
「今回はサラヒミダ遺跡に行こうと思う。今回は間違いないから安心しなさい」
リリカが言う。
「でも、その遺跡って前に行ってハズレだった所じゃなかったかトラップが大量にあった割には何にも発見がなくて」
リリカの言葉を遮り話に割り込んできたのは、生徒会書記のジリス・タナリー。無造作にはねさせた茶髪に金色の瞳の元気だけが取り柄の少年だ。
ジリスの言葉にセレナは答える。
「確かに、あの時は何も無かったのだけれど、今回は同じ遺跡でも目指す目的地が違うのよ」
「あ、あの…それってどういう事でしょうかあの遺跡は入り込んだ迷路の様でしたが、ゴールは一つでしたよ」
怖ず怖ずと手を挙げ発言をするのは、生徒会会計のステラ・ミニキナ。
桜色の髪は肩にぎりぎり届かない位のショートカットで、前髪を赤いヘアピンでとめている。瞳はさくらんぼのような赤。小動物のような少女だ。
「…うん。その件に関しては会長に説明してもらう」
セレナはそう言いリリカの方を見る。
「迷路のトラップの中に地下迷宮に繋がる道があることがわかった。」
鈴の鳴るような、凛と澄んだ声でリリカが答える。
「なんで、そんな事がわかるんだ」
ツアルがリリカに問う。
「この前の探索の時、水責めのトラップの仕組みに違和感を感じなかった天井が凄くに高かったし、水嵩が上がるのが異常に速かったわ。だから、調べたのよ」
「調べたっていつ」
リリカが答えたと同時にジリスが声を上げる。
「午前中」
「一人でですか」
「うん」
次はステラだ。
そんな三人のやり取りを聞きながら、ツアルがため息をついてセレナに語りかける。
「止めなかったのか会長と同じクラスだろう」
「気付いた時にはもう遅かったわ。会長は歴史的なものを目の前にしたら手に負えない位、勝手に行動するからね」
セレナは首を横に振りながら答えた。
「まぁ、出来るだけ早く歴史的発見が出来れば俺は構わないがな」
ツアルが言う。
「まったく、何で貴方はそういう言い方しか出来ないのよ。……もしかして、弟さんの容態、よくないの」
顔を曇らせてセレナがツアルに問うた。
ツアルは少し間を置いて、頷く。
「手術が必要になった。本人はまだ知らないけど」
「そう…。でも、すぐに遺跡に行くわけにはいかないわよ。わかってるでしょ」
セレナが言う。
「…あぁ」
少し間が空きツアルは答えた。
「(わかってるさ。遺跡がどれだけ危険かくらい。……でも、早くしないと……スイルが)」