Another Place ONLINE

□序章
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【ブレイズ】


とある高校のグラウンド……。
どこの高校にも言えることだが、放課後になると運動部の面々が騒々しく練習を始める。
その中でも一際目立つ、部員数の多い部活がサッカー部だ。
次期部長候補、漆原湊は幼少の頃からサッカーの練習に明け暮れている、言わば『サッカー馬鹿』である。
良い汗をかき、スポーツドリンクを一口ばかり飲む姿は、彼に良く似合っていた。

その日の帰り道。
湊はとても良き友人である烏崎拓馬と帰りを歩いていた。
因みにこの男、高校二年生にして英検一級、漢検一級、簿記試験一級の資格を持つ天才である。

「おいバカ」

拓馬が唐突に言葉を繰り出す。
あまりにも唐突過ぎるその発言は隣に歩いていた湊を凍りつかせた。

「なっ、突然なんだよ?……てかバカって言うなバカって」

「いや、いいんだ。本当の事だからな」

実を言うと、湊は幼少の頃よりサッカーに熱中しすぎた所為もあって、学力は最低レベルなのだ。
高校に入れたのもサッカー推薦なのである。

「そうか……ならいい……わけねーだろ!」

「はは、ただの本音だよ」

「なんだ、本音か……って冗談じゃねーのかよ!?」

「全く……なんだこんな小さい事を気にして。それだからお前は駄目なんだぞ」

「小さくねーよ!駄目でもねーよ!」

「いいやお前は駄目だ!とんでも無い駄目野郎だ!」

「なんか凄い侮辱されてる!?」

「お、侮辱なんて言葉を知ってたのか。偉いぞ」

「さっさと本題に入れぇぇーーーー!!」

遂に湊も怒ってしまった。
そんな湊を見て、拓馬は少し微笑んだ。

「そうそう、本題。……なぁ、お前オンラインゲームとか興味あるか?」

「へ?おんらいん?……って、なんだ?」

「…………いやいやいや!なんでオンラインの意味すら知らないんだよ!」

湊の謎の質問によって拓馬が驚愕する!!

「いやぁ、英語は苦手なんだよなぁ」

「苦手ってレベルじゃないから!……今から家来い、な?」

「え?入れてくれんの?よっしゃぁ!」

と、そうして湊は拓馬の家へと連れて行かれた。

20分ほどが過ぎただろうか。
英語の特別レッスンが終わり、ようやく『オンラインゲーム』の話へと移った。

「一応聞いておくけど」

「ん?なになに?」

「お前、パソコンは使えるよな?」

「そ、そりゃそうだろ!!パソコンぐらい使えるっての!」

一年に一度だけとは言えないが…。
やり取りをしている間に、拓馬は要領よくオンラインゲームの起動画面へと進める。

「ほれ、これがそのゲーム。Anather Place WORLD……別の場所の世界って意味だ」

「ほわぁ……何だこれ、面白そうじゃんか!」

「俺がお勧めするんだから面白い。後な、さっきも説明したとおり――」

「住人は皆現実の世界の人が動かしてんだろ!?」

「そっそ、飲み込み早くていいねぇ」

パソコンの画面を見て、湊はまるで欲しかった玩具の前でガラスケース越しに目を輝かせる少年の様な顔付きだった。

「で、どうだ?やる気になったか?」

「おう!教えてもらったとおりやるわ!じゃーな!」

そう言うと、湊は鞄を持ち、走って家を出て行った。

「あっ、おい!……ったく、単純なヤツ……」

湊は窓越しに、駆けて行く湊を眺めていた。

湊の家。
それは二階建ての一軒家で、人が住みやすい家だ。
湊は家に帰るなり、鞄を部屋に投げ捨て、自分の部屋のパソコンの主電源を入れる。
そう。オンラインゲームをやる為に。
試行錯誤しながらも、何とかゲームをダウンロードし、順調に進めていく。
画面にはその物語の自分の存在、アバターと呼ばれる主人公の製作画面が映っていた。

「どれどれ……えと、剣士で、青髪……名前?確か本名じゃまずかったっけ?……適当に決めよう!」

画面の名前入力欄には小さく「ブレイズ/Blaze」と書かれていた。
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