アヤカシ

□相方
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どれほど眠っていたのか、目を覚ますと目の前には、辺り一面、真っ白な風景と、もっとも自分がよく知る、あの男が立っていた。
「これは、これは…」
薬売りは物珍しそうにその男を見上げた。
「一体、どうゆう風の吹き回しで?」

男は薬売りと同じ目線にしゃがみ、化粧を施した、その頬をなでた。頬から首筋へと、滑らすその手に頬は猫のように擦りよせる。さらに行為を進めようと下の方に手を伸ばす。
だが、受け入れると思ったその手は、軽く叩かれ、すぐに男から目線を外した。
なぜだ、とばかりに自分の手を叩いたその指先をしつこいほど舐めて、薬売りに痛いほどの眼差しを向ければ、さすがの薬売りでも無視できなくなった。

「あなたとは…」
静かにゆっくりと薬売りが口を開く。小さくて聞こえない声をひろおうと、自然と前に出る現象に、薬売りはうろたえる。
「…あなたとは、破廉恥な関係には居たくないのです、よ」



『……?』
男は小首を傾げる。
…理解、されてないようで…。
薬売りは呆れたように溜め息をこぼす。

「俺は、あなたとは上手くやっていけてると思っているんです、よ」
薬売りは微笑む。
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