乱闘

□青、蒼、あお。
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俺も痛い、心が。
なんて、言えたらいいのに


「ねぇ僕、どうすればいい?」


再び俯く。
顔はもう両の手で おおってしまった。



彼は、気付いてない。
蒼い空を見るたび、痛むそれは、彼のことを好いているということを。



蒼い、人。
羨ましい。
俺も、蒼い人だったら良かった。
そしたらきっと、マルスもあの鈍感な蒼の後ろ姿ばっか追いかけるんじゃなくて、俺のほうを見てくれる。


…この緑が憎い。


「僕、どうしちゃったんだろう…」


頭を 抱える。
ひとつため息


チラつくピンク色の指先。

抱える指先は、こんなに細かっただろうか。


あまり、食べていないのだろうか。
アイツのことで頭がいっぱい、いっぱいなのだろうか。








「…そんなに頭抱えるくらいのことなら、本人と話してみれば」


「無理だよ」


力なく頭を振る。


「目を見るだけで、自分がおかしくなる」

見るに耐えない、可哀相な青。
ああ、キミをこの手で慰めることができたら良いのに。

俺は、こうやって悩みを聞くことしかできない、弱気な俺。

茶色の液体に俯く。


「大丈夫だ。俺が支える」


「…ありがとう」

青が笑う。
笑顔が似合うんだ、彼は。


笑っていてほしい。
ずっと、ずーっと、笑顔で。

俺の想いが届かなくてもいい。
嫌いなアイツが隣でもいい。
笑顔でいてくれるなら。


マルスの持つティーカップが少し黄ばんでいる。
慌てて引っ張り出したアンティークのカップ。

後で磨かなきゃ。
きっと彼は、またここを訪れる。
マルスが過ごしやすいように、この部屋も掃除しよう。

彼にアピールできるのは、これくらいしかないのだから。







おわり




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