その他

□短編集T
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【言葉が常に聞こえてしまったら】グレナツ


ある時他人の心の声が聞こえるようになりました。
それも、何故かグレイのだけ
この事実に頭を抱えた

「なんでだ…」

「ん?どうかしたか」

「いや、なにも…」


(なんだぁこいつ。
気持ち悪い顔しやがって
変な物でも喰ったか?…いや元々か)


「おい、グレイっ気持ち悪いってなんだよ!」

声を荒げて襟元に掴みかかる
ほんっんとにこいつはいつも俺のことバカにしやがって!
ギンっと睨んでやる
グレイはぽかんとハテナマークを撒き散らした

「くそグレイっそっちだって気持ち悪いじゃねーかよっいつも裸になりやがって!変態露出狂!」

睨みつけてくるナツに徐々に怒りがこみ上げてくるのがわかった
(コイツは俺に喧嘩売ってるのか)

「うっせーな!そっちこそ半裸にマフラーじゃねぇか!マニアックすぎんだろっ」

「うるっせぇよ!ファッションだって!」
「だいたいっ一言も気持ち悪いっていってねーよ」

「……へっ」


ぐるぐる思い返してみる。
むかつくコイツの言うとおりにするのは不本意だけどそれ以上にその通りだから口を閉じるしかなかった


「ほらな」

両手を軽く上げておどけてみせる
あーあ、なんて言いながら身なりを整えた。

「…ていうかさ、ナツ、ほんとはこんなことしたいんじゃなくて……」

頭をかいて
それ以上なにも言わなかった
けど頭の中は言葉を拾っていた
グレイの心から聞こえてくる言葉を



(ほんとは好きだって告白したかった)


は?

一瞬グレイが何を想ったのかわからなかった。
たしかに俺は心の声が聞こえるようになった。でもその言葉は普段なら絶対言わないような有り得ない言葉で、ただただ心のグレイの声を聞いた


(なんでこんなふうになるかな…)

(…けど言ったってきっとコイツは気持ち悪がるに決まってる)

(だから丁度よかったんだ…言わなくて良かった)

落胆の色を浮かべる顔がどこか悲しげだった。
冗談だと思ったけど、真剣すぎる言葉に無視することなんてできなかった


(気持ち悪がるか、なんて聞いてもいないのに勝手に、決めつけやがって)


こんな奴にどう対応するかなんて決まってる
ただ言うだけだ


気持ち悪がるかどうか、俺に聞いてみろ



グレイの目が大きく見開かれて紺色の瞳が輝いた
そんな気がした






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