その他

□だって思春期だもの。シオネズ
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「…か、可愛い」

「だろ?」

やっぱりな。
紫苑は普通だったんだ!
だって思春期だもんな。

小さくガッツポーズをした。
良かった、もうこれで俺に変な行動とかしてこなくなる。
ずっと視線が気になって辛かったからな。

一安心だと思ってた。


「…ネズミに似てる」


ネズミの手から本を奪い取り、ページをめくる。


「この娘も、次の娘も」

エンジンがかかった車みたいに、紫苑は暴走した。

ページをめくって、片っ端からネズミに似てる子を指差す。
足を淫らに開脚してる子や、天と床を貫くポールを足に挟んで上下に動かしてる子達をネズミだと言う。

「全部、ぼくがキミにしてきたことに似てるよっ」

「は?」

とんでもないことを言う。
紫苑が言うには、顔じゃなくて ヤってることがそっくりだと。


「やっぱり僕、エロ本よりネズミの裸の方がときめくみたいだ」

あっさりと、気持ちいいぐらいに爽やかに言う。

信じたくない。
こんなに、女どもの滑稽な裸の姿があるのに、男の裸を取るなんて。
ため息がこぼれる。


「…あんた、やっぱ変」

「そうかな? ネズミと体合わせた仲なのに今更、女にときめくなんて、こっちの方が変だと思うけど?」

にこやかに笑ってみせる。

その笑みに頭を抱える。
こんな筈じゃなかったのに。
あぁ、いつも質問ばっかしかしない、彼の常識が変わってしまった。
これをマクベスで言うと、なんと言い表せばいいのだろうか。


「ありがとう、ネズミ。おかげでこれからのレパートリーが増えたよ」

「え、なんの」

「ナニ、だよ」


立ち上がり、頬に手を添えられる。
ニコニコと笑う紫苑。

それを見た仔ネズミらは、ソファーの下に隠れていく。
彼らも悟ったのだ。
ヤバい、と。

紫苑はそれを見て、笑う。
彼らも、僕たちを祝福してくれてるよ、とわけの分からないことを口走る。


いつのまにか腰を抱かれ、引き寄せられる。
指と指を固く握られ、唇が触れそうな距離に。

紫苑の目を見ると柔らかく細められ、背中に冷や汗が流れていくのを感じた。








END



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