いろいろ

□天然と天然。
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トントントン。
リズミカルな音を立ててトマトを小さく刻んでいく。
使い古されたまな板は、ほとんどがトマトを相手にしていて、相手をする回数が増える度、白いまな板にはトマトの染みが広がっていった。
そろそろ買い換えないといけないなと頭の隅に、小さくなったトマトを更に小さく刻んだ。


コトコトお鍋に収まってるまだ未完成の色とりどりの具とスープが煮えて仕上がりを報せてくれる。


コンロをひねって火の大きさを一段階下げて、そこに仕上げの小さくなったトマトを包丁を使ってまな板から静かにお鍋に入れる。

お玉で全体に行き渡るようにかき回して小皿にひとすくい、味見をする。


「うん、うまく出来てる」


トマトスープが完成した。










「おはよう。ルドガー」

「おはよう」


扉の開く音に、コンロの火を消して挨拶を交わす。

目が合うと、上着をバサッと羽織り、眠そうな顔をしっかりと社会人の顔に直す。
今日もビシッと決まった。
さすがだ、兄さん。


「今日は、兄さんの好きなトマトスープにしたんだ。ほら、今日から出張だろ?ちゃんと兄さんには好きなもの食べてもらって体力をつけてほしいんだ」


「そうか。ありがとう」


兄さんがはにかむ。
つられてルドガーも笑う。
なんだか心がほっとした。



「そういえば、ルルの朝ご飯は?」


「あぁ、やっといたよ。ロイヤルネコ缶」


横目にルル専用のお皿を見た。
お皿には、綺麗にネコ缶のものがなくなっている。
久々の缶詰めに、よほど美味しかったのか、お皿の隅々まで舐め回したのが窺えた。

今はソファーの上で丸くなって眠っている。


「いつも、すまないな」

「何言ってるんだよ。兄さん働きに行ってくれてるんだから、これくらい当然のこと」



「俺は幸せ者だな。こんなに美味しい料理を毎日食べられるなんて」


「…兄さん、新婚夫婦みたいなこと言わないでよ。兄さんって本当に天然だよな」


「なに言ってるんだ。お前の方が天然だぞ?お前は新妻か」


「やめてよ兄さん。俺は男だから。
…今日は大晦日だから仕事が終わったら一緒に年越ししたいんだ」

そう、満面の笑みで

「兄さんと、」



「…お前という奴は、その口説き文句はホストか」


「兄さんこそ、兄っていうレベルの褒め言葉じゃないぞ」


口を尖らせる弟。
なんだかそれが愛おしくて笑みが知らず知らずこぼれてしまう



「…なに、笑ってるんだよ。兄さん」


「あぁ、ごめんごめん。今、すごい幸せなんだよ。俺のなかでは」


ユリウスの言葉に首を傾げる愛おしい弟の頬に口付けを贈った。





見上げた顔は真っ赤だった。







END



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楽しく年越ししようぜ!!2014跡地




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