いろいろ

□殺と愛 ガイルド+all
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「ボロボロになっても立ち上がるとは、お前のその心意気には感心させられる」


ガイアスが刀を構えて、ルドガーも銃のトリガーに指をかけた。


「ルドガーっ!もう、こんなことやめて下さい!」


「血、たくさん出てるんだから、もう戦わなくていいんだよ!ルドガーが死んじゃうよー!」


エリーゼとティポの叫びに、銃の焦点がぶれる。
息が上がって、トリガーにかかる指が震えて、撃つことをためらう。
先程まで覚悟を決めて仲間に槍を向けた決意がぐらぐら揺らいでいく
それでも銃を掲げてガイアスの心臓部に銃口を向けて胸中の想いを叫んだ。



「俺にはっ!守らなきゃいけない、大切な人がいる」


ルドガーはせきを切ったように声を荒げる。
大切だ、その言葉に色が彩って兄のやわく笑う顔が浮かんだ
想いが溢れて、心臓がキリキリと痛みを伴って締め付けてくる
むせかえりそうだ。
ミュゼと目が合った
言葉の端々に震えが混じる
一瞬、相棒だった少女の切なげな顔が胸を掠めた


「俺から危ないことを遠ざけて、苦しいことも全部一人で背負って何不自由なく育ててくれた。俺にとっての世界は兄さんだ、兄さんがいないのは世界がなくなったのと同じ。
多分この想いはアースト達のリーゼ・マクシアとエレンピオス、二つの世界を守りたいのと同じ。その想いの大きさも等しく同じ。少し違うのは、守る人の数だ。そのことで比べたら、きっとアースト達の選択の方が正しいんだろう。だけど、俺は俺の世界を守りたい。あの時救えなかった、ミラのように後悔したくない!」

ミラ、と発したときジュードの顔が曇った。少年の首もとにかけられた、透明に輝くガラス玉がジュードの手に力強く包み込まれた。

「大切な人を守るという己の成すべきことを曲げないその信念に、私は評価したい。…だが、精霊の主として私も果たさなければいけない責務がある。悪いが剣を収めるわけにはいかない」

ミラがフェアーソードを腰から抜く。
赤い瞳が真っ直ぐルドガーを射抜くのに拳をきつく握りしめた

仲間達の在りし日の思い出が蘇ってきて口の中の唾液を飲み下す。

大丈夫、俺は大丈夫
ルドガー自身にも分からない痛みに目を逸らして心を閉ざす。
自分の気持ちを高めさせてなんともないように平静を装うのだ。

兄のタイムファクター化が刻々と命を削り奪っていく
時間がない。
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