乱闘

□好き…かも。
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心地良い、鳥のさえずり。
少し肌寒い朝。
太陽の匂いがわずかに残る、白いシーツ。
目を開けると白もやがかかったように、視界が悪い。
手で目をこすろうと、手を動かそうとすると、何か手に違和感を感じた。
よく目を凝らして、違和感を覚えるその手を見やると、それは男の手だった。

ベッドの端を見ると、肩を上下させて、頭を腕の中に埋め、そのわずかに見え隠れする、まだ幼さを残し眠るその顔。
見慣れた蒼い髪。


アイク。


…ずっと、手を握っててくれてたらしい。
僕の手の体温とアイクの体温が一緒だ。
昨日、具合悪くなった僕を部屋まで運んできてくれて、「ルームメイトだから」とかなんとかってピットに言ってくれて、朝まで僕のことを看病してくれてたらしい。

手を握ってくれたのは、僕が握ってって言ったから。







少し、嬉しかった。



でもね、もっと僕のことを見てほしい。
そんな手を握るだけの関係じゃなくて。

ピットばかりを見つめるその目線を僕のほうに向けることはできないのかな…?


「…僕ね、君のことが好き、なんだと思う」

なんて、曖昧な告白なんだろう。
こうゆうことを言う僕は、やっぱりおかしいのかな。

未だ寝ているその人の頬を、もう片方の手で撫でてみる。
やっぱり起きない。

「…僕、真剣に告白してるんだけどな…」


密かに溜め息を零して彼への悪態を吐いてやる。
聞こえていないことを祈りながら。







end


 

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