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□あの日の約束を今
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『約束するから泣きやめよ。ほら、男だろ?』
『本当?絶対だよ。約束破るなよ?でも、涙が止まらないんだ。』
『じゃあ、とっておきのおまじないを教えてやるよ。』
PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi
むくりと起き上がり、目覚ましを叩き切る
「夢か。懐かしい。」
独り言をつぶやきつつ、学校へ向かう支度をする。
「いってきます!」

今日の練習も、みんな手を抜いていて、気がつくと、拓人がいなくなっていた。
しばらく学校の敷地内を探し回っていると、旧部室の前に拓人はいた。
近づいていくと彼は振り返らずに言った。
「なあ、霧野。俺、間違ってるのかな?」
「いや、間違ってなんかいない!間違っているのは今のサッカーだ。」
「でも!」
勢い良く振りかえった拓人の目から涙がこぼれる。
「どうしようもないんだ!みんな潰されるのを怖がってる。俺も怖い。でも…」
声が完全に涙声になって、それでもしゃべろうと必死に言葉を紡いでいる。
「なあ、約束覚えてるか?」
「約束?」
「ほら、幼稚園の時の。」
「ああ…」
顔を拓人に近づける。
唇が触れた。
一瞬のキス
拓人は思考が停止したようで、固まったままだ。
クスリと笑いながら、俺は言った。
「涙、止まったな。」
「あ、ああ。」
『おまじない。どうしても涙が止まらないときは、キスすれば涙が止まるんだ。
拓人の涙がどうしてもとまらない時
俺がこのおまじないしてやるよ。』
「あ、あ…」
真っ赤になった拓人を抱きしめ、耳元で囁く。
「大丈夫だって、俺はいつまでも拓人の味方だから。」
腕の中で拓人が安心したように全身から力を抜いてよりかかってくる。
こくりとうなずくのを見て、
俺たちはもう一度キスをした。

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