アゲハ蝶

□Stop Standing There
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今日も仕事だ。

目標を発見、背後から忍び寄るのは沖田さん。

自分は、屋根からそれをじっと見守っている。

沖田さんに何かあれば、自分が動くという打ち合わせ通りに。

ちらっとこっちを見上げる視線は、隙がない。

「行きますぜィ」

と、唇だけを動かして。

声なんか聞かなくても、その唇の動きでわかる。





「もう逃がさねーぞ」

沖田さんが呟く、

「テメェ…大人しく捕まりやがれっ、」

沖田さんが動く。

背中のバズーカを素早く構え、勢いよく放つ姿は、やっぱりお手本だ。

目標物は紙一重でバズーカをかわす。

見た目と異なる俊敏な動きに翻弄された、自分の視線。

「凛、そっちに行きやしたぜ!」

「任せてください!」

思わず足に力が入る。

ここで仕留めないと、また見失ってしまうだろう。

自分が捕まえる。

必ず、仕留める。

深呼吸をした後。

「っ、」

たん、と軽い足音を立てて屋根から飛び降りた。

目標物の真上に急降下。

同時にそれを潰さないよう細心の注意を払って、着地。

両手でしっかりと相手を捕まえる。

「沖田さん、確保しました!」

任務成功。

「流石ですねィ」

背中にバズーカを背負い直した沖田さん。

「これに関しては凛には負けまさァ」

「だんだん動きが読めるようになってきたので。ね、プー助?」

自分が両手にしっかり抱いているのは、ブルドックのプー助。

松平さんの、大切な家族。

自分がプー助に頬ずりをすれば、プー助は不満げな表情のまま大人しくなってくれた。

この後はどうしようか考えていると、物音を聞いた松平さんと土方さんが話しかけてくれる。

「おー、プー助!オマエなんでいっつも俺から逃げ出すんだよォオオオ!凛ちゃんに抱かれるとおとなしいってのに…」

松平さんがそう嘆けば

「そりゃ、犬ですらオッサンより若い女のほうがいいってことですぜ」

沖田さんはしれっと答え。

「総悟、オマエまたこんなところで仕事サボって…」

土方さんが咎めれば、

「とっつぁんの命令でさァ、逃げ出した犬を捕まえてくれって」

それをさらっとかわすのも、お手本…なのかもしれない。



思わず噴き出してしまえば、

「北條も、こういう仕事は断れって言っただろ」

土方さんが煙草を消しながら、呆れた顔をしていて。

「土方ァ…俺の凛ちゃんに、なんて言った?」

松平さんが銃を取り出せば、いつものやり取りが始まる。





屯所に来てから、もうすぐ二ヶ月。

ここまではあっという間で。





きっとここからも、あっという間だと思っていた。










(終わりが見えていないからね)




   
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