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□カミサマ
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征十郎ハ本当ニ天才ダナ

赤司ガ出来ナイコトナンテナイヨナ

ヤッパリ赤司クンハウチラト違ウヨネー

俺は、完璧だ。
それが俺、赤司征十郎という人間。幼い頃から周囲にそれを無意識に要求され、自分もそうあるべきと生きてきた。
そしていつしか、その言葉は、俺の枷となっていた。一種の強迫観念だ。俺は完璧でないといけない、赤司征十郎でないといけない。
全く、お笑いだ。自分が作った自分に苦しめられるなんて、安い恋愛小説で充分だというのに。

「赤司くん!」

俺を呼ぶ、声がした。ざわりと脳内が蠢く。
その可愛らしい顔に笑みを浮かべて、俺に寄ってくる黒子。完璧である俺に寄ってくる鬱陶しい虫の代表例だというのに、こうも愛しく思えるのは何故だろうか。
恋をしているから、なんて理由を作る気はないけれど、一番当てはまるのはそれだろう。

「ちょっと困ってることがあって…赤司君なら、絶対解決してくれますよね?」

アア、モチロンダ、オレニデキナイコトハナイ。

「やっぱり!赤司君は、本当に凄いです!僕とは全然違いますね!」

そうだ、この笑顔が俺に向いているのなら、いくらだって自分を欺いてやる。
今日の精神安定剤は何粒だろうか。






















余裕綽々な笑みを作ってる赤司くん。全くもって、今日もつまらないぐらいに「完璧」だ。
ねえ赤司君、僕本当は知ってるんですよ

君のカバンの中には精神安定剤と睡眠薬がいっぱいなこと

冷え性だからといって決して晒さない手首と腕には自分でつけた傷でいっぱいなこと

君が僕のことが大好きで、僕の前で「完璧」であろうとしていること

だから僕は、赤司君を崇高して、カミサマを欲してる。君が壊れていく退路を、塞ぐ様に。
意地悪いって、知ってるんですよ。人間として最低なことをしてるってことも。

けど、何も与えられなかった人間が、何もかも与えられた神様に嫉妬するなんて、そんなにいけないことなんですか?
僕だって同じ思いをしてるんだ。いつだって壊れてしまいそうだし、手首は赤で滲んでるし、未遂で終わった自殺痕が首の包帯の下に隠れてる。

だから、赤司君が僕と同じだと知った時は、本当にうれしかった。
神様はちゃんと人間だった。

地にどころか、相当深い所にまで足をつけていた。

それなのに、赤司君は決して堕ちようとしなかった。藻掻いて藻掻いて藻掻いて藻掻いて藻掻きまくった。

無理しなくていいんですよ。
ちゃんと僕が、その手を引っ張ってあげる。そうして一緒になりましょう?


人間は、カミサマが思ってる程いいものではないだろうけど。

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