Is じゃすてぃす!!

□2 色鮮やかな
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「ひゃっほう来たぜ誠凛!!」
「翔さんテンション高いですよ」

桜舞い散る春うららな時期。それに伴う進級エーンド進学。
私とテっちゃんもその例に漏れず、高校一年生としてこの誠凛高校に入学した。正直同人活動で疎かにした学力で行ける程優しくなかった偏差値だが、割と十年に一度の本気を出して合格!
やったね翔テっちゃんと同じ高校に通えるよ!
ちなみに帝光中学校からこの誠凛高校に来た人間は私とテっちゃんだけだ。勿論キセキの世代なんてどこを向いてもいない。
まあ、私としてはあいつらなんていない方がいいのだけれど。

あの私が夏コミの原稿に追われていた時。あれ、シリアスにならないおかしいな。
あの日テっちゃんは、私の部屋に飛び込んできた後、いつものその鉄仮面を外してわんわんと泣き出した。その瞳からこぼれ落ちる水はキャンディーみたいにぽろぽろしてて、私はただこの幼馴染みの久しぶりの号泣に慌てるしかなかった。
なんとか落ち着いたテっちゃんに事情を聞いてみると、どうやら私の中学で有名だったチートバスケ集団、「キセキの世代」と仲違いしたらしかった。
私の幼馴染みは特殊なバスケスタイルを持っていた。そしてそのスタイルがチート集団に認められて、色々ありながらも楽しそうにバスケするテっちゃんが私は好きだった。
・・・まあ、そのテっちゃんのこと邪な目で見て薄い本を作っていたのも私なのだけど。
話を戻そう。しかし、テっちゃんの話によると、そのチート集団はだんだんと才能を大きくしていって、チームプレイなどどこ吹く風、独立したバスケをする様になり、最後にはテっちゃんのバスケスタイルまでも否定した。
テっちゃんのスタイルの武器は、自前の影の薄さを生かしたパスだった。けれど、一人で点が取れる様になった彼等は、協力を必要とするパスは必要なくなり、テっちゃんを切り捨てた。
そんな彼等は、そのスタイルをおかしいと思わないまま開花し続け、そしてバラバラのバスケ部は全中優勝を果たした。
けれど、そんな彼等を見るに堪えたのか、細かい理由は話してくれなかったけど、テっちゃんはバスケ部をやめた。
それを聞いた私の心境は。

ふざけるな。

あんなにテっちゃんのことを追いかけて、しつこいぐらいにまとわりついていたくせに(いやまあ私もそれはおいしく頂いていたわけなんだが)、自分の都合で捨てて、悲しませて。
正直切ない関係も嫌いじゃないしむしろいただきまーすな私だけれど、それにテっちゃんが絡んでいるなら別だ。腐女子の前に幼馴染み。
テっちゃんを悲しませるとあらば、萌えの対象であろうと容赦はない。

ちなみにその後私は描きかけのキセキ黒原稿を躊躇なく燃やし、桃井ちゃん男体化の桃黒同人誌を出した。どうやらテっちゃんの話ではデータ収集が担当だった桃井ちゃんも彼等からもうデータはいらないと言われ、テっちゃんにだけその悔しさを話してくれたらしい。
可愛い女の子、もとい桃井ちゃん、もとい帝光のキキララことダブル天使を悲しませた罪は重いぞ貴様等。

「翔さん。部活、何に入りますか?」
「え?ああ、部活かあ…」

いつの間にやらテっちゃんの手元には部活一覧と書かれた紙が携わっていた。
ぶっちゃけ部活なんて面倒くさいし、そんな暇があったら原稿やりたい。やっぱり中学に引き続いて帰宅部続行しようかな。
そんなことを考えて、テっちゃんはどうすんの、と聞いてみようと思ったけれど、バスケ部の文字をじっと悲しげに見つめているテっちゃんを見て、その言葉を飲み込んだ。

「……翔さん、僕、バスケ部に入ろうと思います」
「え…」

予想もしていなかった言葉に、私は目を丸くする。そんな私の心を見透かした様に、テっちゃんは薄く微笑んだ。

「やっぱり僕は、バスケから離れられないみたいです」

痛そうな笑顔のテっちゃんは、部活一覧をぺらりと私の方へ向けた。





色鮮やかな
(君達の色はもういらない。)(トーン貼らないでモブの悪役として出してやる)

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