短編/お題
□言
1ページ/1ページ
つい、数刻ほど前。
沖田さんが私の部屋に来た。なんでも、土方さんが私に言うことがあるらしい。
既に、幹部は広間に揃っていると…。
この時点では代々予想は出来ていた。
「…本来なら、もっと早くに言うべきだった。」
そしてこれが、今の状況。
土方さんが、私の前で顔をしかめながら座っている。
顔をしかめるほど嫌なら、私の目の前には座らなければ良いのに。
「出ていけ。」
ほら、予想通り。
普通なら、出ていく所だろう。
こんな地獄な様な生活から開放されるのだから。
『嫌です。』
だが生憎、私はそんな事をしない。
する筈が無い。やるべき事がまだ有るのだから。
「なんだと。」
『嫌だと行ったんです。』
絶対に出ていかない。皆に何をされようと。
「あまり、ふざけたことを抜かすんじゃねぇ。」
『ふざけてません。何を言われようと、嫌です。私にはまだ、やるべき事がある。それが済むまでは…出ていきません。』
「んだと…。どうせテメェのやることなんざ、アイツを傷付けるだけだろ。出ていかねぇなら、この場で殺す。」
殺す…ねぇ。流石に、幹部達全員には勝てる気がしない。
けど――…
『私は死なない、…まだ、死ねない。言いましたよね。やるべき事がある…と。』
そんなに、私を消したいのか。
ならば…
『では、こうしましょう。…私に変若水を飲ませれば良い。もっとも、狂う気も死ぬ気も無いですが。それに、私が変若水を飲めば…あの女に害はないでしょう。朝の活動は辛いのですから。』
朝の活動が多少辛くなるだけ。
そう言えば、幹部達は納得したようだ。
「良いだろう。…フ、小娘がどこまで耐えられるか見ものだな。おい、変若水を持ってこい。」
私は用意された変若水を勢い良く飲んだ。
大丈夫。…力の制御をすれば、抑えられる。
大丈夫――…
(天国よりも地獄を選ぶさ)