青の祓魔師 CP
□after the party
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『After the party』
昔は、クリスマスというのは家族で楽しむものだった。
昼はチャリティーイベントをみんなで手伝い、夜は騒がしい教会のみんなでクリスマスパーティー。
それが、燐と雪男の育った修道院の毎年の光景だった。
それは、今年は違ってしまった。
「父親」を失い、その代わりに友人をたくさん得て…
そうやって変わったことは良かったのか、悪かったのか。まだ何の結末も迎えてはいない身には分からないことだ。
「兄さん。」
みんなが帰った後、少し寂しそうだった燐は、洗い物をしているうちにもとに戻ったらしい。
お世辞にもうまいとは言えない鼻歌を歌って、尻尾をゆらゆらと揺らしている。
「…ん?なんだ?雪男。」
雪男が声をかけると、皿を洗っていた燐が振り返ることもなく応えた。
「今日、楽しかったね。」
「!…おう。」
そんなセリフが雪男から聞けるとは思っていなかったのだろう。
燐が驚いた声を出す。
ついでにゆらゆら揺れていたしっぽが一瞬ピン、と張った。
それを見て、雪男は小さく笑った。
燐だってなかなか、自分からそんなことを言ったりしないのに。
「また来年…」
「…ああ。また、できたらいいよな。」
返す燐の表情は雪男を見ないから分からない。
けれど声はいつもと違って静かで、なにか思っているようにゆっくりとしていた。
昔のように、また来年、と無邪気に信じられる日はいつか。
雪男がそう思っていると、突然燐が声をあげた。
「雪男!」
「な、なに。兄さん。」
びく、と思わず身構えた雪男に、やっぱり振り向かないままの燐は、それでも明るい口調で言葉を続けた。
「絶対来年はもっとすげーケーキ作るぞ!」
「・・・はいはい。ほどほどにね。」
それはなんにも考えていないからか。
それとも雪男の考えに少なからず気がついたからか。
昔からイマイチ分からない兄にまた救われて、雪男はちょっと笑った。