銀魂夢
□はちみつれもん
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「おっはよーそーご」
通学路で見慣れた髪色を見つけて声をかけた
「はよ……」
まだ眠そうな声に顔を覗き込めば、その目元には赤いアイ、マ……スク?
「ちょ、アイマスクって!!前見えないじゃん!!」
「何言ってんでさァ。前なら見えてまさァ…土方破滅の道がなァ」
「総悟が何言ってんの!!何か違うものが見えてるよ!!」
そこまで言うと、やれやれといった感じで総悟はアイマスクを首に引っ掛けた
「ったく、朝からやいやいうるせェヤツでィ」
「うるさくないですぅ。ほらっ、早くしないと遅刻しちゃうじゃん」
めんどくさがる総悟の手を引いて、教室に着いたのは本鈴がなる30秒前
ギリギリなのはいつものことだが、今日は何かが違った
静かなのだ
いつもは授業中でも騒がしい3Zの教室が、話し声すら聞こえない
不思議に思った総悟は、警戒しながらドアに手を伸ばす
そして、横にスライドさせた
パン パンッ
突如聞こえた破裂音に、とっさに悠を庇うように構えた
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Happy Birthday 総悟!!
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が、聞こえてきた声に目を丸くした
3Zの面々がクラッカーを構えて揃っているのだ
それは、教師のクセにいつも遅刻する銀八でさえも
「え…なん、ですかィ?こりゃぁ」
「お誕生日おめでとー。そーご」
「嬉しいか?総悟。悠ちゃんがなぁ、サプライズしようって提案してくれてな?」
「近藤さん……」
「どうせなら他の女共が騒ぐ前に、って朝することにしたんだ」
「土方さんまで」
確かに3Z以外の女子は、総悟がギリギリに来るのを知っているから、他の教室と離れている3Zに朝からわざわざ来ない
今までは姉のミツバが朝一番に祝ってくれてたが、今年からはそれもない
総悟自身、自分が誕生日だってことを忘れていたのだから、サプライズは成功だ
「ほら、それじゃあ沖田くんも来たことだし、さっさと席に着けー」
銀八の一言で、朝のHRがはじまった
「……んじゃ、今日はこれで終わりな。はい、解散」
そして放課後
「そーうごっ、一緒帰ろ?」
「悠……俺ァ今から部活なんだけどねィ」
そろそろ最後の大会も近いし、部活に出ようと思っていた総悟は渋い顔をする
「こんどーさんが、今日は休んでいいって!明日からは休ませねぇ、ってトシ君が言ってたけど」
「……そうかィ。じゃあお言葉に甘えるとするかねィ」
「あ、コンビニ。総悟、アイス食べたい」
「今日は暑いからねィ。悠がどうしてもってゆーなら奢られてあげまさァ」
「しょーがないなぁ。今日は特別ね」
「で、」
「ん?」
「なんで悠は超かっぷ(チョコ)で俺はゴリゴリくん(ハチミツレモン)なんでィ」
近くの公園に移動して、嬉しそうに木のスプーンを動かす悠と、若干不満げな総悟
「なんかね、はちみつれもんって総悟みたいだな、って思って」
「俺が…はちみつれもん?」
「うん。こないだ退くんにはちみつれもんの飴もらったとき思った」
曰く、口に入れたときのふんわりとした甘さは総悟の外見みたい
曰く、舐め始めた時の酸っぱさは総悟のドSな感じ
曰く、でも舐め続けると甘くなるとこが、本当は優しい総悟みたい
「総悟は素直じゃないだけだもんね?」
「………そうかィ、」
そう笑顔で言われて、総悟はほんのり赤くなった顔を悠から背けた
はちみつれもん
その甘酸っぱさはまるで恋の始まり