むやみに

□ガラスの靴屋さん
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むかしむかし、或るところに或る少女がいたそうな。


…国王様が、王子の花嫁探しを始められた。今度妃を迎える第三王子は今人気の例のあの人であり、わたしの大事な想い人。
知り合ったのは彼が王子になる前の小さな男の子だった頃、所謂幼なじみだった。

かくして、おおらかというか大雑把で有名な国王様は今宵、舞踏会をお開きになったのだ。城内には所狭しと王家に縁のある伯爵家や他国皇族から娘達が集う。
国王様は本気でこの中から妃を見つけるおつもりらしく、今日は正式なお招きを戴かないと参加出来ないとか。
お呼ばれを知った日には貴族で良かった、なんて笑った。じゃあその日はこれを履いて行こう、とサファイアが散りばめられた紅いハイヒールを物置から引っ張り出したりして。彼からの最初の贈り物は未だにわたしの足にぴったりで、少し嬉しくなった。


次々にお相手の代わる王子を見つけるのに、そう時間はかからなかった。遠目からでも幼い頃の面影が見え隠れするコバルトブルーのタキシード姿に、思わず頬が緩んだ。
そして。だいぶ夜も更けて、流れる曲が彼の得意なワルツに変わって、もうすぐわたしの番かなと一歩王子に近づいた時、


彼はホールをあとにした。


全くもって可笑しな話だけど、程よくお酒のまわっている会場は主役抜きで踊り明かしていた。人混みを掻き分けてわたしの前から消えていく彼の先には、今し方ペアを組んでいたブロンドの少女。
わたしは迷わず彼を追った。
何故彼が急いでいるのかなんて分からない筈なのに、
どうしようもなく悔しくて、わたしは必死に走った。
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