むやみに

□アメアガリニチョウメ
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どうせ降るならせめて雪とかさあ…。

グラウンドに弱く降りしきる雨にひとり愚痴っても、気分はなかなか上がらない。これから帰るなんて考えただけで溜め息が出る。
昨日磨いたばかりのローファーは泥だらけだし、手先が凍てつく寒さ。おまけに今朝弁当箱を置き忘れてきた罰とも言うべくこの空腹感…なんか虚しい。あーあ、なんで今日に限って居残りになっちゃったんだろう。小テスト、いままで上手く切り抜けてきたのになあ。
取り留めもなく物思いに耽っていたら、案の定水溜まりを踏んづけた。あ。やっちゃった。うわ、脚に泥水ー…ティッシュどこだっけ?

傘を肩に預けて不安定な体制のまま鞄をゴソゴソしていたら、後ろから傘を奪われた。

「もう止んでるけど?」

振り返るとわたしの傘を畳む君。え、止んでるの?…まあ傘さす程じゃない、か。

「水溜まりで遊んじゃ駄目でしょ、ほら、帰るよ」

歩き出した君を慌てて追いかけながら、口元がにやけてないかとても心配だった。

それから、二丁目の交差点で、初めて君と手を繋いだ。

「だってほっとくとすぐ転ぶし」


帰ったら、靴下洗わなくちゃ。お弁当、まだ置きっぱなしかな。温め直して食べよう。
るんるんしている自分に気づいて、たまには雨もいいかもと思った。

浮かれてるのが、冷え切った左手から君に伝わってしまいそうな気がした。

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