むやみに
□だからそしたら
1ページ/1ページ
"別れてほしい"
そう口にした君には、当然だけどこの場を面白くしようとかそういった気は全く見受けられなかった。真剣で、そして寧ろ気まずそうな、わたしはその瞳を正面から凝視した。目を離せなくて、逸らしたら何かに負けてしまいそうで、ただ返事もせずにずっとそのままで。
好きな子が出来たんだと、ごめんと、ひたすらに謝るのは君が優しいからだと分かっていた。別れ話はこんな風に切り出すものなんだ、きっと。
わたしがなかなか喋ろうとしないからだろうか、いつもより君は饒舌だった。呆然としててよく覚えてないけど、悪いのは俺だとかたぶんそんな事を話してたね。
そして"嫌いになったわけじゃないんだ"って、言ったの。
だからそしたら
好きだって、言ってよ。
呟いた途端、気持ちが溢れた。わたしじゃ駄目なの、何が悪かったの、いつまでわたしを好きだったの?
こんなにも好きなのに、君のこと精一杯愛してたのに。
優しい君を困らせるけど、言わせてね。
だってもう、好きになってはくれないんでしょう?
だからそしたら、嘘でも構わないから、好きだって。言うだけでいい、から。