じつに

□夢物語
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もう何度、君の隣を夢見ただろう。


学校帰りによく寄る本屋さん。
わたしは他の棚には見向きもしないでツカツカと店内の一番奥を目指す。ここに来る時はいつもそう。そして買い物は決まって一冊のアイドル雑誌。いやでも、アイドルオタクだとかそういうのとは違くて。


わたしの初恋の人は、アイドルになった。
…冗談抜きで。
小学校の頃のあの子は、お父さんが転勤族らしく引っ越してから行方が途絶えていた。当時から引っ込み思案だったわたしは、想いを伝える術もなくそれきり、思い出に。
そして彼は、去年テレビの向こうの人になった。



今更仲良くなれるとは思ってない。ろくに喋ったことも無かったし、きっとわたしのこと忘れてる。もしかしたら最初から知らないのかもしれない。


あの頃斜め前の席だった君は、どんどん遠くへ離れていってしまった。
きっとわたし達何ひとつ変わってないのに、あの頃のままなのに、もう夢でしか会えないんだね。

"応援してます"とすら、もう君に届けられないなんて。
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