捧げ物
□僕はまだ知らない
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軒下で雨宿りをしている僕の目の前を、紅色の番傘が通って行く。
番傘を差しているのは、綺麗に着飾った芸妓らしき女。
何処にでも居そうな芸妓だが、他の芸妓とは違う所があった。
何か良いことがあったのか、彼女は紅色の番傘をクルクル、クルクル回して、雨の中を歩いて行く。
僕の知ってる芸妓はあんなに無邪気じゃなくて、なんて言ったら良いのかな、例えればまるでお人形さんみたいなんだよね、だけど、彼女は違った。
だから、少し興味を持ったのかな?
「ねぇ、ちょっと君」
そう僕が声を懸ければ、クルクルと回っていた番傘がピタリと止まり、彼女は後ろを振り向いた。
「そうそう、君」
そう言って微笑めば、君の頬が赤くなった様に見えた。
「は、はい、なんですか?」
「うん、僕さ、傘、忘れちゃって」
屯所まで入れてくれない?
ニコニコと微笑みながら彼女にそう問うけど、こんな御時世に見ず知らずの奴を傘に入れる奴なんて、きっといないよね。
「良いですよ」
そう言って、ふんわり微笑む君
「・・・・・ありがとう」
そんな君の笑顔を見ていると、何故か胸がギュッ、と締め付けられる様な苦しい感覚が僕を襲った。
少し歩いただけで息切れしたのかな・・・・?
最近は変な咳きも出てるし、何かが可笑しい
今日もこんな子に声を懸けちゃったしね。
「君、名前は?」
そう問う僕を君は図々しいと怒るだろうか?
それとも馴れ馴れしいと言われるだろうか?
「名乗る程の者じゃありません」
でもまたそんな僕の予想を覆して君はまたふんわりと笑うんだ。
また、まただ・・・・
また苦しい、僕はどうしたんだろう?
「あ、新撰組の屯所、着きましたね」
「ありがとう」
僕がそうお礼を言えば、君は、では私はこれで、って頭を下げて歩いて行く。
クルクル、クルクル
紅色の番傘が回る、廻る。
「名前、ちゃん聞いとけば良かったな」
彼女が去った後、僕の胸にはモヤモヤとした訳のわからないものが渦巻いていた。
「あ、雨、止んでる」
この気持ちはなんなんだろう?
end
後書き
総司君の甘酸っぱい物を書きたかったねですが、意味不になった〜(泣)
あの、今から土下座します。
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