OTHER

□親友
1ページ/2ページ



「聞いてくれよ、アントニオ〜」
ちびちびと焼酎を呑みながら、虎徹が愚痴をこぼす。
虎徹とは昔からの呑み仲間で、週に一度はこうして二人でバーで呑んでいる。
最近、虎徹は仕事のパートナーの話ばかりしているのだが、本人はそのことに気がついていないようだ。

「…でさ、アイツってば…」
虎徹の愚痴はまだ続く。
なんだか馬鹿らしくなってきた。
夫婦喧嘩の愚痴のようだ。

バーナビーは虎徹と組むうちに、だんだんと変わっていった。
虎徹は全力で否定するが、はた目から見ても優しくなった。
虎徹の、人を癒やすおおらかさに触れたから。

虎徹が誰にでも優しいのは、失う痛みを知っているからだ。
愛妻を亡くしたときの虎徹を俺は忘れられない。
「慟哭」というものを、俺は初めて目の当たりにした。
虎徹の魂から、大量の血が流れ出た。
娘の楓ちゃんがいなければ、虎徹は廃人になっていたかもしれない。
虎徹が立ち直ってくれたことを、俺は今でも神に感謝している。



-
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ