紅蓮の優姫
□伊達軍滞在記,弐
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『で、何をお手伝いすれば良いんですか?』
私は前回に引き続き、成実さんに捕まってます。
「ん?俺も暇でさー、暇潰しに城に罠でも仕掛けようかなと…」
何故…?
『ちなみに…誰が引っ掛かる予定で?』
「勿論、梵!」
彼は清々しい程ハッキリと言い張りました。そういえば成実さんの梵と言うのは、政宗さんの幼名の梵天丸のことだと後から知った。
『それならお手伝いします!!』
小十郎さんが引っ掛かったら大変だけど…その心配は無いだろう。
「流石臣緒ちゃん!!ね、言ったろ?“楽しまなくちゃ”って」
あれはそう言う意味だったのか…
(でも、罠とか仕掛けるの大好きですよ!!)
「ククッ…」
『フフフ…』
妖しく笑う私達を女中さんや兵士さん達は、近付かないようにしていた。
「Ah〜…やっと終わったぜ。小十郎の奴、折角honeyが来てるってのによ〜…」
机に縛り付けられていた為、首が痛い。首をほぐすように回していると、足下に不自然な紐がはってあった。
「Ha!!成実だな。こんなバレバレなtrap、もう引っ掛からねぇぞ!」
バレバレなtrapとはいえ、彼は一度引っ掛かったらしい。政宗は紐を軽く跨ぐように向こう側へ足を延ばし着地させた。
─しかし…
ミシッ…
「あ?」
ズシャッ!!
「Ouch!くっそ、やられた!!」
なんと政宗が足を着いたちょうどその場所の床が抜け、足がハマッてしまったのだ。
「help!!小十郎ぉ!」
足が良い具合にハマり取れなくなったらしい。
『ププ…見ました?ハマった時のあの政宗さんの顔!』
「流石は武田の軍師!梵の足を着く場所ピッタリだったな!」
曲がり角から顔を覗かせ、その一部始終を見ていた私達。笑いが収まらず、声を殺して笑っていた…………が、
「成実ぇ!!それにhoneyまで!そこにいるのは分かってるぞ!!」
バレた。そして運良く足が外れたのか、私達を捕まえようとこちらに走って来た。
「逃げろ!!」
『はいぃい!!』
私達は笑いながら走る。さり気なく政宗さんを罠を仕掛けた場所に誘導しながら。
「て…てめぇら…!!」
「梵、見事に全部引っ掛かったな…!」
私達を追いかけていた政宗は、ようやく追いつき目の前にいる。様々な罠に引っ掛かり、姿はボロボロだが…
『やりましたね、成実さん!!』
私と成実さんは手を取り喜びあう。
「なんだよなんだよ!!なんでお前らそんな仲良くなってんだよ!!!」
『そんなこと言われても、成実さんとは気が合うんですよー!』
三人廊下で騒いでいると、政宗さんの背後から小十郎さんが歩いてくるのが見えた。
「Niceだ小十郎!!アイツら捕まえてくれ!」
「ヤバイ!!小十郎にバレたらおっかねーぞ!!逃げろ!!!」
『えぇ?!』
取りあえず成実さんの言葉通り逃げようとしたが、小十郎さんに腕を掴まれ逃亡失敗。
『ごごごごめんなさい!!!!人様の城に罠仕掛けて、あまつさえ小十郎さんの主に全部ハメさせてすいませ〜ん!!!』
(斬られる…!!!!)
そう思ったが、小十郎さんから出た言葉は意外なものだった。
「…………あの罠の方法、教えて貰えないか?」
『は…?別に良いですが…何故?』
「政宗様が執務から逃げ出さないようにするのに、ちょうど良いと思ってな」
「shit!!!なんてこった!」
ニヤリと笑った小十郎さんの顔、暫くは忘れられなそうです…
(どうして伊達軍の皆さんは、サディストな笑い方をするんですか?!)
それから、小十郎さんに罠の仕掛け方を紙に書いて渡した。
『伊達軍も大変だなぁ…』
空を見上げると、日が沈み燃えるような赤い色に染まっていた。
『見事な武田軍色だぁ!!』
(天下はやっぱりお館様に取って欲しい…北条と伊達、いつきちゃんが味方な今、北は残す所は上杉のみ…か)
『川中島の戦い…』
(やはり武田と上杉の対立は防げないや…)
「Honey!!come on!宴の始まりだ!」
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