紅蓮の優姫

□初陣,小田原城奇襲戦
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傷が治っていった兵達は、戦場で舞う少女を見て口々にこう言った。


“戦場を舞う紅蓮の優姫だ”と。


『一通りは良いかな…』


舞う手を止め、辺りを見渡す。すると見えはしないが、茂みの方に気配を感じた。


『誰…?』


ゆっくり茂みに近寄り、葉を掻き分ける。そこにいたのは佐助以上にボロボロになり、起き上がる事もままならない風魔小太郎だった…


『小太郎さん?』


「…………」


分からない…多分会話にならないだろうから、勝手に治療する事にした。扇を取り出し一振りしようとすると、小太郎が警戒するように微かに身を捩った。


『大丈夫…私は臣緒。私を信じて…』


返事を待たず(あるかも分からないが)扇を一振り。


「………」


また無言…かと思ったら、小太郎はスッと立ち上がり、身体を二つに曲げた。お礼のつもりかな?


『どういたしまして』


「お、臣緒よ。よくやってくれた!かのような不思議な力を持っていたのじゃのぅ…」


『黙ってて申し訳ありません…!!私も昼間分かったばかりだったので…』


するとお館様は、いつかのように私の頭を撫でてくれた。


「良い良い!臣緒のおかげでこのように犠牲の少なかった戦が出来た、感謝するぞ!」


『ありがとうございます!お館様ぁああ!』


「幸村ぁあ!お主もようやった!!」


「うぉおおぉ!ぅおやかたさまぁああ!!」


「ぃゆぅきむらぁあ!!」


殴り愛開始…


「臣緒と申したのう、わしはしばらく上田城に世話になる!小太郎も何故か主を気に入ったらしい!」


「…………」


「照れるな照れるな!」


(照れるてるんだ…)


『宜しくね小太郎さん!』


片手を差し出すと、何故か首を横に振られる。


(握手したくないとか…?)


『小太郎さん?』


「…………」


これも横振り。


『ん〜…あ!もしかして…小太郎?』


さん付けを止め、呼び捨てにしてみる。すると打って変わって小太郎は、首を縦に振り片手を差し出していた。その手を取ろうと私も再び手を延ばすと、私と小太郎の間を何か黒い物体が横切った。


「はいお終い〜。風魔の旦那ぁー、あまり調子のらないで欲しいな」


(何故喧嘩ごし?)


こうして私の初陣は武田軍勝利の形で終わった。


“武田軍に紅蓮の二武将あり”


たまたま戦を偵察していた忍によって、こんな噂が全土に広がっていた事も知らずに…


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