紅蓮の優姫
□初陣,小田原城奇襲戦
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「いざ出陣よ!!」
月夜が綺麗な夜。数千の兵を連れ城を出た。
─出陣前
私は、お館様に特別に作って貰った武田カラーの赤い戦服に身を包み、門前にいた。しかし、目の前に大きな問題が。
「え?臣緒ちゃん馬乗れないの?」
『ん〜、私達の世界で馬に乗れる人って珍しいかな…』
「それは困ったのぉ…今回は城前まで馬で突撃を考えておるのじゃが…」
準備万端な兵達。あまり待たせる訳には行かない。
「じゃ俺様が「そそそ某の馬に乗れば良いで御座る!」
「旦那ぁ?!どんな心境の変化?」
「何も破廉恥な事はない!!俺は純粋に臣緒殿を実のい、妹の様に慕っておるのだから!!」
「妹って……(絶対違うっしょ…)」
(意外だ…幸から馬のお誘い。しかも妹みたいに思ってくれてたんだ!)
『じゃあ、お願いしようかな?』
馬の前で戸惑っていると、幸がオドオドしながらも手を差し出してくれた。その手を取り、幸の前に跨がる。
『じゃあ、戦場に着いたら後ろに乗るね!幸が近くの敵を、私が後ろと遠くの敵をやっつければ死角無し!』
「おぉ!流石は臣緒殿!」
「確かに近距離戦な旦那に対して、遠距離戦な臣緒ちゃんが近くにいれば敵無しだね〜(でもムカツク…)」
「うむ、では異存は無いな佐助」
「…なんで俺だけ?」
佐助とお館様も馬に跨がる。私を包み込むように後ろから手綱を握る幸の顔は真っ赤だ。そしてお館様の出陣の声に、全兵駆け出した。
「あれが北条の城、小田原城だよ。」
(やっぱりゲームで見るより大きいな…)
城門前に本陣を築き、布陣を整える。先陣は幸と私、それに佐助と全兵が続く形だ。お館様は本陣待機。
私は宣言通り、幸の後ろに中腰で乗りなおした。
「臣緒、あまり無理するでないぞ」
『はいお館様!』
「臣緒殿、準備はよろしいか?!行くで御座るよ…全兵出陣!!」
幸の掛け声に、北条軍がズラリと待ち構える戦場に突入した。
《わぁあああ!!》
怒涛の如く、戦場に叫び声が響く。
(ぅ……キツいかも……)
やはり戦のない平和な世の中世界で育った私には、この血に塗られた世界は思わず目を瞑りたくなるような惨状で…
(でも…それでも、私は私のやり方で!!)
「うぉおおぉ!!」
『やぁあああ!!』
私達の馬は本陣に向かうべく突き進む。その間にも幸は近場の敵を斬り倒し、私は遠くの敵の足を狙い銃を放つ。
「臣緒殿、何故足を狙うのだ!?」
『これが私のやり方だから!』
「旦那ぁ、臣緒ちゃん!もうすぐ栄光門だ!!」
声のする上の方を見れば、佐助が鴉に捕まり上空から見下ろしていた。
(栄光門か…佐助のストーリーモードでは確か、夜だったから五本槍が出てきたような…?)
友のやっていたゲーム展開を、必死に思い出している間に栄光門に到着。しかし、栄光門に近付くもあのウザッたい声が聞こえてこない。
「あれは…」
いつの間にか隣りに居た佐助の視線が、栄光門上部へ向いている。
『まさか…』
私も釣られて上を見ると、それはちょうど門から降りようと飛び下りて来るところだった。
「…………」
「風魔小太郎…」
(アレレ?小太郎って昼に出てくるキャラじゃなかった?五本槍は何処行ったんだろ…)
「貴殿、風魔小太郎殿とお見受けする!某と「旦那、ここは俺様に任せて臣緒ちゃんと北条の所に!忍には忍ってね」
佐助は大型手裏剣を取り出し、何度か回して手に納める。
「佐助…頼んだぞ!」
パシンと手綱を振り、再び走り出す私達の馬。佐助はそれを見届けてから小太郎に向き合った。
「さぁて、お仕事お仕事!」
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