紅蓮の優姫
□上田城知略攻防戦
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『幸村ぁ〜!小太郎がお団子買って来てくれたよ!』
小田原戦から三日。氏政さんと小太郎とすっかり仲良くなった。
「おー、臣緒は孫のようで可愛いのぉ〜」
今では縁側で私と幸、氏政さんでお茶をするのが日課になった。
「小太郎殿、かたじけないで御座る!」
「…………」
いつの間にか私の隣りを陣取る小太郎。
「臣緒ちゃんも旦那も餌付けされすぎ!」
「…………」
「何ぃい?!俺様怒っちゃうよ?!」
でも、佐助と小太郎は何故か仲が悪い…どちらも大型手裏剣を取り出し臨戦体制。
『ほら、佐助も小太郎もお団子食べなよ!』
その数日の間はほのぼのした日々だった。
『え?氏政さん、今日北条領に帰るんですか?』
「そろそろ領地が心配での〜」
外行きの支度をしていた氏政さんと出くわした。
「…………」
「小太郎はまだここにおるといい!いきなりだったし、まだこっちに居たいだろうからのぉ〜。明日帰ってくると良い!」
「………」
ペコリと体を折り曲げる小太郎。
『そっか、寂しくなりますね…』
「ふぉふぉ、今度小田原に遊びに来るのだぞ!」
『はい!!』
「氏政殿、道中お気を付け帰って下され!」
「幸村、世話になったの〜。躑躅ヶ崎館の信玄公に挨拶してから帰るわい!」
そうして氏政さんは帰って行った。
「Hey、小十郎。行ったようだぜ、布陣を組め」
「はっ!」
「Let't Party!」
片目に眼帯をした竜が、それを見ていた事も知らずに…
氏政さんが帰った後、皆で縁側でいつものお茶飲み会。ほのぼのとお茶を啜っていると、いきなり何かが目の前に降り立った。
「長!大変にございます!」
「才蔵…?どうした?」
スタッと膝を折り曲げ頭を下げるのは、真田十勇士の一人、才蔵だった。
「此所から東、門正面より見えます丘に伊達政宗が!」
『伊達軍?!』
「伊達政宗で御座るか!」
私と幸村、佐助と小太郎は天守閣へと移動し丘を見た。
「……単騎?」
佐助が呟くように口にした。
確かにそこには、六本の刀を腰に差し、右目に眼帯をした男…伊達政宗が一人馬に跨がっていた。しかし、その姿に何故か違和感を覚える。
『おかしい…』
何故伊達政宗は一人…?彼が居ないでは無いか…
竜の右目が。
「まったく〜。竜の旦那ってば、また真田の旦那に挑みに来たのかね〜…」
やれやれと肩を竦める佐助に、幸村はやる気満々の様だ。
「某、お相手致して『待って幸!』臣緒殿?」
「…………」
『小太郎もそう思う?………幸、佐助…これは罠かも知れない。いくら伊達政宗がいつも幸に勝負を仕掛けてくるからって、これはおかしいよ…』
「何故で御座る?」
『もしかして、彼はいつも挑んで来る時、勝手に城に入って来たりしない?』
「確かにそうだったかも…なるほどね」
佐助は理解したようだが、幸には難しかったようだ…未だに頭を捻っている。
『じゃあ幸。幸が伊達さんに勝負を挑もうと城に行きました。しかし、伊達さんは城の中に居ます。その後どうする?』
「それは勿論、城の中に参りまする!」
『そこだよ。何故彼は幸に挑みに来たのに、あそこから動かない?…まるで“俺は此所に居る。此所まで来い”と言っているかの様に…』
『だからあれは、私達をおびき出す作戦かも知れない……彼の真の目的は、この城内にあるのかも知れない…』
(けど、伊達政宗が欲しがるような物が此所にあるの…?)
「どうする臣緒ちゃん…?」
『まずは上田城に居る女中さん達を避難させて……此所が戦場になるかも知れない…』
「しっかし、臣緒ちゃんも無茶な作戦立てるなぁ〜…」
─まずは、小太郎。貴方は躑躅ヶ崎館へ。お館様を此所へ連れて来て。
「…………(コクリ)」
─佐助、貴方は…………………。
「了解しましたっと。気をつけてね、臣緒ちゃん」
『では、参ります!』
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