ユウヒナ
□第三話『今すごく幸せです』
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お菓子の買い置きが底を尽きそうになっていたのを思い出し、近くのスーパーに寄ることにした。
日奈への誕生日プレゼントはこの前買ったブレスレットで良いと思ったけど、それだけだとついでみたいで微妙かも知れない。
何かしら追加しようと考えながらお菓子売場を見てみる。
「(モンブラン風チョコレートって……どうなんだろうこの新商品)」
目立つ所に置いてあったチョコレートを手に取ってみる。
モンブランを型どったチョコレート(いちご味)。
値段は手頃なラインとは言え、味が想像出来なくて躊躇してしまう。
「なぁ、それ美味いのかい?」
挑戦すべきか否か悩んでいる私へ誰かが声をかける。
振り返れば勝ち気そうな瞳に、長く赤い髪を後ろでひとつ結っている少女が微妙そうな表情で立っていた。
「いや、食べた事ないからどうなのかな〜と思って。何なら一緒に挑戦してみません?」
知らない人だったけれど、何となく親しみ易い雰囲気だったので冗談めかして提案してみる。
赤い少女は一瞬目を輝かせたが、すぐに申し訳なさそうな声で言う。
「嬉しい話だけど……あたし、持ち合わせがないからいいや」
立ち去ろうとする赤い少女の手を思わず掴む。
赤い少女は驚いて声をあげるが、わたし自身どうして掴んだのか分からない。
「だったらわたしの奢りで良いから半分どうかな?」
我ながら突然何を言っているのか。
だけどこのまま別れてはいけない気がした。
「アンタがそれで良いなら断る理由もないけどさ……」
赤い少女が困っているのに気づき慌てて手を離す。
微妙に気まずい空気が流れる。
とりあえず自己紹介をしてみる。
わたしは妹がいる事を含め簡単な自己紹介をする。
「佐倉 杏子(さくら きょうこ)だ、よろしくねっ」
杏子は勢いよく握手してくる。
人当たりの良さそうな笑顔を浮かべていた杏子が握った手をぼーと見詰めている。
何か気になる事でもあったのか問うわたしに戸惑い混じりに呟く。
「あたしらって、会った事あったけ?」
初対面の筈なのに前にも似たような事があった気がする、と杏子が言う。
会った覚えはないが、わたしも初めて会ったような気がしない。
単純に杏子の人柄の良さからそうだと感じたのだと思っていた。
「前世で仲良かった……のかも?」
おどけてみればデコピンで返される。
そして二人で笑い合う。
旧知の友人にあったような気分で、わたしたちはレジへと向かった。