ユウヒナ

□第十一話『上手くはいかない世界だけれど』
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町中を走り回ったけれど、ほむら先輩の姿はおろか痕跡一つも見つけられずにいる。

ただでさえ神出鬼没な人だったのに、今度は空なんて飛んでいるのだからそう簡単に見つかる訳もない。

きっとあの人との思い出の場所に行っているのだろうけれど、わたしにはそれが何処なのか見当もつかない。

案外、最後に別れたあの場所にいるのかも知れない。
しかし残念ながらここからでは反対方向で、さっき走って来た方へ戻らなければならないので却下。

……正直、精神的にも肉体的にもかなり疲れた。

人探しの魔法とか便利な魔法を使えない自分が恨めしい。

・・・愚痴っていても仕方がない、と肩を伸ばす。
深呼吸を何度かしてもう一度走り出そうとした時、冷水をかけられるような寒気がした。

反射的に右へ跳ぶ。

わたしの脚が少し離れた場所に着く。

一瞬遅れてさっきまでわたしがいた場所を四筋の紫色の光が貫いていた。

「意外ね、貴方ならかすり傷ぐらいつくかと思ったのだけど」

つまらなそうに言いながらほむら先輩が真っ黒な翼をはためかせ、わたしから5歩ほど離れた所に現れた。

ほむら先輩の方から来てくれるとは願ったり叶ったりな状況だけれど、喜んでばかりもいられない。

「死んでもらおうと思って」

変身し武器を構えて不意打ちの真意を問おうとするわたしに、冷笑と共に答えるほむら先輩。

何となく予想はしていた言葉だけれど、いざ面と向かって言われると結構傷つく。

本当はもう少し話をしたかったけれど、飛ばれてしまってはそれ所ではなくなってしまいそうな気がした。

だから、その前に力を削いでおこうと踏み込む。
この距離なら飛ばれても攻撃が間に合うし、矢を撃たれても致命傷を避ける程度には対応出来る。
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