□ハッカ喉飴=145円
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風邪をひいた。

私は風邪をひくと、必ず喉が痛くなる。

熱は出ないから、学校は休まない。

喉痛いのも結構辛いんだぞコノヤロー。



「おはよう、名字」

「はよ…」


バス通学の私は1番に教室に着く。
2番目に南野。
他の生徒はあと30分は来ない。

南野は頭良いくせに早く学校に来て、教科書なんか開いてる。

嫌味だ。


「風邪?」

「んー…」


もともと朝が弱くて、話すのが面倒なのに、今日は喉まで痛いんだ。

返事はいつも以上に適当。


「喉痛いの?」

「んー…」

「熱は?」

「ない…」



なんなんだ今日は。
いつもは挨拶しかしないのに。

喉痛いんだから話したくないんだけど…。


「そう、お大事に」

「おー…」


私の面倒くさい話しかけるなオーラに気づいたのか、南野はさっさと話を切り上げた。





「おはよー名前ー」

「んー…、はよー」

「あれ、どした。元気ない?」


流石友達、私が元気がないことに、5秒で気づいた。


「喉痛い」

「そ、お大事にー」


…それだけ?もっとこう…心配とかしてくれないの…?


「バカなのに風邪ひいたんだ」

「あ、海藤おはよ。ほんと、バカなのにねー」

「……」


友達の後ろにいた海藤。
開口一番がそれかよ。
お前ら労りの心はないのかっ!


「少しは心配してよ…」

「どうせ治るもん。大丈夫大丈夫」


くそっ!
あんたが風邪ひいても心配してやらないからなっ!










「あ゙ー」

「うわ、ひっどい声」


昼休み、私の喉は死んだ…。


「飴な゙い゙ー…?」

「なーい」


いつもいっぱい持ってんのに、なんで今日に限って!


「名字、大丈夫?」


振り向くと、南野が心配そうにこっちを見ていた。


「駄目。大丈夫じゃな゙い゙」

「これあげます」

「ん゙?」


ころん、と、手のひらに乗っかったのはハッカの喉飴。

とても有難い。
有難い、が……。


「南野君、名前ハッカ駄目なんだよね。悪いけど」


声の出ない私の代わりに友達が代弁してくれた。


「え、そうだったんですか!すみません…」

「あ゙ーごめ゙ん゙…」


あああ、ごめん南野。
そういや、朝から心配してくれてたっけ。
面倒くさいとか思ってほんとごめんね南野!


「名字、やるよ」


今度は海藤がメロン味の飴をくれた。

お前が嫌いなだけだろ!

と、心の中で叫んだが、有難くもらっておいた。









「…海藤、名字がハッカ駄目なんて聞いてないぞ」

「いや、俺だって知らなかったし」

「お前は何の為にいると思ってるんだ」

「少なくとも、お前と名字のキューピッドをやる為じゃないな」

「……」

「南野…お前その面で、女1人まともに落とせないのか?」

「…黙れ」





ハッカ喉飴=145円





(145円、無駄になったな)
(黙らないと、食妖植物に食わせるぞ)



END

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