□明日から落としにかかります。
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「南野君すっげいい匂い。抱きついても良い?」

「ダメです」

「減るもんじゃないじゃんか」

「嫌です」


最近仲良く?なった名字さん。
正直しつこい。
俺とすれ違う度言ってくる。
いい加減我慢の限界だ。


「名字さん…はっきり言って迷惑です。やめてください」

「…えー…ハーイ…」


案外あっさり引き下がった。
なんか素直過ぎる気がするけど…まあ、いいか。


次の日、いつものように名字さんに挨拶をする。


「名字さん、おはよう」

「…おはます」


ボソッとあいさつを交わし、友達の方へ行ってしまった。
朝、テンションが低いのはいつものことだが、何か違う気がした。



その日、名字さんと話したのはあいさつだけ。



次の日も、また次の日も、名字さんとの会話はほぼ0。
当たり前だったものが無くなると、寂しいものだ。
俺、何かしたっけ?


「あ、真山良い匂いするー」

「あ、なんか洗剤だかなんだか変えたつってたわ」

「良い匂いー。…抱きついていい?」

「お前変態かよ…よっしゃ!ばっちこーい!!」

「良いのか!やった…」

「ん?」

「?南野君?何?」


何って何?
何で俺は名字さんを止めたの?


「ちょっと…」

「え?何何!?」

「行ってらっさーい」


ちょっと強引に、名字さんの腕を引き誰もいない隣の空き教室入る。


「もー。何?南野君」

「名字さんの方が何なんですか」

「は?」

「最近全然話さないし、さっきのだって…」

「南野君が迷惑って言ったんじゃんか」


確かに…言った。
迷惑だ、と。
でも…


「…でも…他の男に言わないでくださいよ」

「…意味わかんない。すっごい自己中。何なの」


名字さんが珍しくイライラした声で話す。
俺だって自己中だってわかってる。
でも、俺以外には言って欲しくなかった。
俺だけだと思ってた。
俺は、特別なんだと……。

「もーいい?私戻っ…」


名字さんの目が見開かれる。
俺だって驚いた。
戻ろうとした名字さんを無理矢理振り向かせ、キスをするなんて。
いつの間にかキスしてしまうくらい好きになっていたなんて。


「…名字さん…が…好き、なんです」

「………」


名字さんは真っ赤になってうつむいていた。
うん、可愛い。

一度認めてしまうと、名字さんの何もかもが愛らしく思える。

知らないうちにかなり惚れ込んでいたようだ。


「南野…秀一…」

「はい…?」

「っざけんなこのやろう!!」

「っぐ…!」


腹に1発クリーンヒット。
な、何で!?


「俺のこと好きなんじゃないんですか!?」

「はぁ?誰がそんなこと言った?馬ぁー鹿!自惚れんのも大概にしろ!」


そう吐き捨て、走り去った名字さん。


「……思わせ振りも大概にしてくださいよ……」





明日から落としにかかります。





(とりあえず仲直りからだな…)


END

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