文
□君の理想の王子様
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「名前の理想の男って、どんな奴だ?」
「んー?白馬に乗った王子様」
「ふーん…」
桑原の場合
「なー名前、明日ここ行かねぇ?」
桑ちゃんが見せてきた1枚の紙。
「ん…?桑原牧場…!?え!?牧場やってたの!?」
「俺の親父の兄貴ん家だ。アイスとかあんぜ?」
甘いものには目がない私。
もちろん
「行くー!」
──────
2日後、バスで1時間かけて桑原牧場にやってきた。
「ここが、おじさん家だ」
「うわー!でかーい!広ーい!」
「お、あの人がおじさんだぜ」
「え?」
見れば、桑ちゃんのお父さんによく似たおじさんが、こっちに向かって手を振っていた。
「よぉー!和!でかくなったな!HAHAHA!」
「イテテテ!おじさん!イテェ!」
「お、すまんすまん」
近づいてきたおじさんは、桑ちゃんの頭をぐりぐりと撫でていた。
笑い方が、桑ちゃんのお父さんとそっくりだな、と思った。
「こんにちは。和真君の友達の名前です」
「お、可愛いお嬢さんだね!おいで、アイスご馳走してあげるよ」
「ほんとですか!わぁ、ありがとうございます!桑ちゃん、アイスだって!」
「ん、おめぇちょっと先行っててくれや」
「え?なんで?」
「ちょっくら用事が…」
「ふーん?じゃ、先行ってるから」
「おぉ」
用事ってなんだろ?
挨拶でもしてくんのかな?
ま、いーや
アイス、アイス!!
おじさんは、アイスをノナプルにしてくれようとしていたけど、丁重にお断りした。
さすがにね、いくらなんでも無理ですよ。
「名前ちゃん、ここで待ってな。もうすぐ来るはずだ」
「?はぁ…」
連れて来られたのは、土だらけの場所。
どうせなら緑の草の上が良かったなー、なんて思いながら、濃厚なアイスを食べていた。
ガッポ ガッポ ガッポ ガッポ
「ん…?何の音?…って、え?桑、ちゃん?」
音のする方を見ると、『安全第一』と、書かれたヘルメットをかぶった桑ちゃんが、のんびり歩く黒い馬に乗っていた。
「え?なんで馬?」
「!?おめーが言ったんだろが!!」
「え?私?うーむ………あっ!!」
そういえば、白馬の王子様の話したかも…
冗談だったのに……
その前に白馬じゃないけど……
「…白馬じゃなくて悪かったな!」
でも、まあ、
「桑ちゃんらしくて良いんじゃない?」
私の為に、っていう気持ちが嬉しかった!
「ありがとう、桑ちゃん!」
「おう」
白馬じゃなくても、
お城のお庭じゃなくても、
王子服じゃなくても、
君が理想の王子様
(ねー、私も乗りたーい)
(あぁ、おじさーん!馬もう1頭!)
(違う!桑ちゃんの後ろに!)
(っ!!??)
END