眠れぬ街のシンデレラBOOK
□大切なのは…〜廣瀬遼一〜
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☆。。☆
これは例えば、の話だ。
作家なんてある意味、孤独だったりする。
どんだけ昔馴染みと、どんちゃん騒ぎしても、気が晴れない時もあるんだよ。
自分の中にある全ての想いを、原稿用紙に書けば、一時は達成感に満たされるが、自分の想いが誰かに届かなけりゃ、意味がない。
それが『誰か』とは言えないし、
言うべきものでもない。
ただ…
この想いを誰かに知って欲しい―――…。
俺の中にある
やるせない孤独感。
光と闇。
希望と絶望。
俺が今、心から望んでいるものは何だ……?
俺が今、欲しいものは
『癒し』なんだろう―――…。
自分の中にある柵を振り払えたら…。
全てから解放されたら、
どんなに楽だろう。
『 オレ ハ
ユメ ヲ ステル ノカ ?
ステキレナイ クセニ…』
―――煩い……。
黙れ!!
俺の中のもう1人の俺が、問い掛けて来る……。
その度に苦しい。
「………さん…」
(……?…誰 だ…?)
「……遼一さん…」
(この…声…)
うっすらと目を開けると
そこには…
「…また怖い夢でも見たんですか?」
心配そうに俺を見ている、俺の恋人―――…。
「………………」
「…大丈夫ですか…?」
「………あぁ…お前が居るからな……」
「無理しないで下さいね?」
「…お前、俺にいつの間に意見出来る程
偉くなったつもりだよ…」
「『意見』じゃなくて、今のは『心配』ですっ!
それに偉くなったつもりはありません☆」
ぷぅっと、頬を膨らませる彼女。
そんな彼女が可愛くて、つい苛めたくなる……。
彼女さえ俺の傍に居てくれれば、それが俺の中にある孤独を消してくれる。
俺は彼女の腕を掴み、キスをする。
「…ンッ…」
彼女の口元から紡がれる熱くて甘い吐息。
「もっと激しく愛してやるから、来いよ…」
夢は別物。
リアルもまた夢うつつに。
俺は今、リアルな甘い夢に身体を焦がす―――…。
☆fin☆